2020年8月16日(日)

▼津市内の診療所勤務の新型コロナウイルス感染者の職業を「会社員」と公表していた問題について鈴木英敬知事は「適切ではなかった」と陳謝する一方、自身も「違和感がある」と指摘していたことを明らかにした

▼何だか職員が悪いと言っているように聞こえないか。まだ知事が〝大知事〟でなかった就任初の予算編成で、放課後児童クラブ補助金を減額して松阪市長らの批判を浴びた。自身も不本意だったとしながらも、すべて目を通した上での決断で、責任は自分にあるという主張を堅持した

▼成長することが必ずしもプラスばかりではないことを気づかせてくれる。昨年初め、はしかが津市の宗教団体の研修会で発生し、感染者が県外にも広がったことについて、鈴木知事は同団体が当初公表に消極的だったことで早い段階の封じ込めに支障があったことを認め、公表の仕方について検討すると表明した

▼「拡大していることは大変遺憾。情報の公表というものはしっかりやらなければならないところであった中で、こうなったのは残念」が昨年1月会見での問題提起。同5月には「情報提供や注意喚起のあり方について次あったらどうするか。医療保健部で整理をした」

▼今回「再三本人や医療機関を説得したが、公表に同意を得られなかった」(鈴木知事)は、またも原因機関名の公表に踏み切れない理由に過ぎない。「会社員」という偽情報を流した説明にはむろんなり得ない。はしか拡散の教訓は生きなかった。何の役にも立たない「検討」や「整理」が繰り返されていたことを垣間見せてくれるだけである。