2020年7月16日(木)

▼「できる限り早期に名古屋以西の調査と準備にかかるなど、皆さんと協力して大阪延伸に向けた準備を進めていく」と、リニア中央新幹線建設促進県期成同盟会でJR東海の取締役専務執行役員

▼静岡県との協議が不調で「残念ながら2027年開業は難しい」とか「名古屋までの開業が遅れると、大阪までの開業に影響が出ると懸念される」など散々〝脅し〟た後の発言である。「皆さんと協力して」がどういう意味か、およその見当はつこうというものである

▼公共事業と言えば、大の虫を生かすためには小の虫を殺しても構わない、みたいな論理がまかり通る。リニア中央新幹線の工事再開をめぐり、静岡県の川勝平太知事とJR東海の金子慎社長の会談で、その不快な思いが久々によみがえった

▼「お前のところだけの反対で地域経済の振興をつぶしていいのかとみんなに言われ、四面楚歌で同意した」と長良川河口堰事業に最後まで反対した赤須賀漁協組合長。「国直轄事業だから、環境基準は(より緩やかな)国の基準をクリアすればいい」と高速道路建設で県の土木部門責任者が議会常任委員会で答えた

▼大井川の流量減などを懸念する川勝知事に対し、金子社長は工事の推進に理解を求めた。環境問題は国の有識者会議の判断を待つとしながら、国土交通事務次官が早々に歩み寄りを求めた

▼「皆さん」である。6月に「もう少し誠実に対応してほしい」。空気を読めみたいなことを言った鈴木知事だが、その後非難がましいことは言っていない。「皆さん」から一人距離を置く気になったのなら見識である。