<まる見えリポート>松阪移住交流センター開設 新型ウイルスで移住相談増

【松阪市空家等対策計画が示す地区別空き家率】

三重県松阪市は先月1日、同市飯南町横野の飯南産業文化センターに移住促進の拠点「まつさか移住交流センター」を開設した。移住相談を受け付け、空き家バンク業務を手掛ける。4月以降、新型コロナウイルス感染症の影響で県外から移住の問い合わせが増え、追い風になっている。(松阪紀勢総局長・奥山隆也)

本庁の移住促進係が移住交流センターヘ移転した。空き家バンクの対象となる飯南・飯高地域や宇気郷地区へ案内しやすく、問い合わせが多い土日曜も窓口を開けられるため。職員3人と同市初の地域おこし協力隊員1人が対応する。

人口減を食い止めるため空き家を移住者に紹介する空き家バンク制度は3月末で88軒を登録。特に飯高は人口減少と空き家対策の危機感が高く、全体の半分以上、52軒を占める。

移住希望者の利用登録は県内122人、県外163人の計285人。契約成立は57組百人に達した。成約は60代以上が多いが、40代も増えている。

コロナの影響で4、5月は移住の問い合わせが多く、31件あった。同係は「県外から移住の問い合わせがたくさんあった。相談者の特徴としては若い年齢層が増加傾向。うれしい」と受け止める。

開設式典で竹上真人市長は「コロナ騒ぎの中で移動制限がかかり、都会で生活が大きく変わると思う。テレワークでいいなら、どこに住んでも仕事ができるよね。ピンチをチャンスに」と意気込んだ。

内閣府が実施したコロナに伴う意識行動変化の調査では、テレワークを経験したと回答した人の割合は全国で34・6%に上った。新たな働き方を背景に東京23区の20代の3割超が地方移住への関心が高まったと答えた。

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空き家物件の登録は年々増加しているが、「まだまだ不足している」(同係)。

同市が平成30年に実施した実態調査では、市内全戸のうち空き家は4・09%の3109軒。そのうち「すぐに住めそうな建物」は37%、「少し手を加えればすぐに住めそうな家」は36%で、合わせて7割を超える。

地区別では、嬉野宇気郷が270軒のうち空き家が38・89%の105軒を占め、空き家率が市内最高。飯南・飯高は飯南中心部の粥見を除きいずれも空き家率は10%前後の高率となっている。すぐ住めそうな空き家は飯南で89軒、飯高で98軒ある。空き家バンクに物件登録する余地がある。

倒壊しそうな空き家もあり、防災や景観面で問題なので、昨年2月に策定した同市空き家等対策計画では空き家数と住めない物件をそれぞれ5年間で1割減らす目標を掲げている。

空き家バンク制度の活用は対策の大きな柱で、登録を促進するため家財処分補助金を創設した。

開会中の市議会に上程した補正予算では、コロナ対策として空き家バンクの登録物件を活用した「田舎暮らしと温泉が楽しめるサテライトオフィス推進事業」(約600万円)を盛り込んだ。同市飯高町宮前の一軒家に事務スペースや会議室を整備し、近くの道の駅「飯高駅」の温泉利用券がもらえる。長期の利用者には空き家を紹介する。

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同市初の地域おこし協力隊員、横山陽子さん(44)は昨年10月に着任。移住を促す田舎暮らしの魅力発信や、空き家バンク登録物件の掘り起こしと空き家の活用支援に励む。

市議会総務企画委員会が先月2日に開いた移住促進をテーマにした政策討論会に呼ばれ、「空き家の課題の一つに家の中に残った家財道具の片付けがある」と報告。「飯南高校生が片付けのボランティアを始めた」「たくさんの不要品が出る。中にはお宝と呼べるようなものもある。少しずつ集めて古道具市を開催したい。移住者を呼ぶきっかけになる」と話した。

移住を呼び掛けるだけでなく、自身も愛知県あま市から夫と2人で引っ越した。「食に関して興味があるので、将来は主人の職業である自転車屋と一緒にカフェをやりたい」と夢を語る。

同市は今月1日から、2人目の地域おこし協力隊員の募集を開始した。募集対象は20―45歳で、都市に在住し、活動期間終了後も同市に定住する意欲のある人。締め切りは同31日。