100年に一度とされる未曾有のコロナ禍が世界を席巻し、人々の生活様式がさま変わりする中、移動の制限や人と対面しにくい状況を克服しようと、ヨガやスポーツ教室などでオンラインを活用する取り組みが加速している。動画配信が手軽にできる上、利用者からは「これまでつながることのなかった人々と交流ができる。世界が広がる」と歓迎する声が多い。全国で感染が落ち着きつつある中で、ウィズコロナ、アフターコロナの世界が模索されており、この流れは止まりそうにない。
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「もし痛かったら無理せずにゆるめてください」。4月9日、玉城町の自宅で、パソコンに向かって次々とヨガのポーズを取るインストラクターの福盛雅子さん(43)。正しい姿勢を示しながら、動作の一つ一つを言葉を交えながら丁寧に説明していく。この日、福盛さんは初めてオンラインでのヨガ教室を行った。
福盛さんは約1年前からインストラクターとして町中央公民館などでヨガ教室を開いてきた。生徒数は月40―50人に上る。ただ、コロナの感染拡大が県内でも広がる中、4月8日を最後にレッスンを休止した。
緊急事態宣言を受け、クラスターが発生したスポーツクラブなどが休業要請の対象となった。政府が今月初めに示した「新しい生活様式」では「筋トレ、ヨガは自宅で動画を活用」とあり、“名指し”で矢面に立たされた業種の一つがヨガだ。県内でヨガ教室などを開いているインストラクターらも収入減少が直撃しており、「再開しても生徒が戻るか心配。先が見えない」(女性インストラクター)と不安を募らせている。
福盛さんの教室も休止したが、「生徒の安全を考えるとやむを得ない措置だ」と理解する。一方で、仲間の協力もあり、「これを契機に始めてみよう」と思い立ったのがヨガのオンライン教室だ。
教室の生徒を中心にまだ参加者は10人前後だが、先月から週2、3回ペースでライブ動画を配信。動画視聴しながら自宅でできる手軽さもあり、参加者からは「教室に通う必要がないため、ぎりぎりまで家の用事ができる」といった好評の声が寄せられたという。
さらに、栃木県に住む友人も参加してくれた。福盛さんは「普通なら教室に来ることができない人にも参加してもらえる。オンラインならではのつながり方」と話し、場所を問わずに参加者を募れる可能性に手応えを示す。来月から公民館教室は再開予定だが、オンライン教室も続ける予定だ。
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伊勢市出身で立命館大卓球部監督を務める傍ら、スポーツを通じて地域活性化に取り組んでいる川面創(44)さんは「オンラインには大きな可能性がある」と語る。
川面さんはコロナ以前からオンラインを積極的に活用し、神島と沖縄県石垣島の中学生や、イギリスと京都の中学生をつなぐといった世界的な交流を手がけてきた。コロナ禍に見舞われた3月には、現地に赴くことができなかったため、神島中学校の卓球部生徒に、オンラインでのスポーツ教室も開いた。
川面さんは「世界中とつながることができる」とオンラインの強みを話す。川面さん自身、国内外のさまざまな場所に赴き、卓球指導を行っているが、オンラインを利用すれば直接現地に行かずとも交流の回数や幅が広がるとする。
そのメリットは、交流や横のつながりが増えるだけにとどまらない。離島や過疎地の子どもたちが、国内外の一流のスポーツ監督や選手らの指導を受けることが可能となる。そのため埋もれていた地方の逸材発掘や、人材強化にもつながると期待する。
とはいえ、「ずっとオンラインオンリーでもさみしい」と川面さん。神島中の生徒からは、オンライン教室の後、「次はいつ来てくれますか」との声がかかり、胸が熱くなった。「基本はもちろん対面型。それにオンラインをうまく組み合わせることができれば、相乗効果が高められる」としている。