▼息を殺す思いで、ゴールデンウイーク本番を見つめる読者も多いのではないか。「まだまだ気を緩める段階ではない」と鈴木英敬知事。外出自粛に続き来県、帰省を控えるよう懸命に呼びかけ、訴える
▼新型コロナウイルス感染が話題になってしばらくは県内での感染はなく、安倍晋三首相の休校要請に懐疑的な市も見られたが、鈴鹿市の陸上練習会での五輪メダリスト感染で一転、緊張が走った。以後連日の感染者の確認。息苦しい空気に包まれた
▼4月末からの1週間感染者ゼロに愁眉を開く思いだが、連休突入に伴う発見の遅滞なのか、不安は消えない。感染者ゼロがゴールデンウイーク後まで続くかが、事実上の判断材料になると漠然と感じる向きは少なくあるまい。オンライン教育が現実のものとなり、新学期九月変更説も「大事な論点」と知事は評価した。新聞は、コロナ後の世界を語り始めた
▼新型コロナとの戦いは戦争に例えられるが、敵の姿が見えないのだから戦意高揚とはなりにくい。敵を見極めなければ落ち着かないという気持ちは、感染者や医療従事者らを仮想敵に仕立てる。デマも中傷もそんな気持ちが引き起こす幻想との戦いである
▼「いつ鎮静するのか」というのがこのところ人々が口にする合言葉。いつまで我慢すればいいのかということである。「気を緩める段階ではない」という知事の言葉に誰も異存はないが、展望がないかを探し求めもする。感染者ゼロは、見えない敵がわずかに見せた片りんとも受け取れる
▼連休後の緊急事態宣言策にはそんな県民感情も織り込んでもらいたい。