2020年4月27日(月)

▼「感染拡大防止に全力を挙げるさなかで大変遺憾」と鈴木英敬知事。伊勢赤十字病院が新型コロナウイルスの検査結果を誤って「陰性」と患者に伝えたことに対してだ。「ミスとはいえ言語道断」

▼同じミスでも、「陰性」を「陽性」と間違えたのなら少なくとも感染拡大の恐れはない。逆では、感染者を野放しにした可能性も否定できない。民間検査機関から届けられた「陽性」の結果を、臨床検査技師がカルテに誤って入力するというのは初歩的なミスに見える。知事が怒りをあらわにするのも無理はない

▼複数確認ができなかったことについて、楠田司院長は検査件数の増加に伴う「多忙さ」をあげた。ミスの言い訳になるはずもないが、殺人的多忙の医療現場に、新型コロナが大きくのしかかっていることはうかがえる

▼医療現場の働き方改革を巡る県医師会の調査に対し「病院は警戒心が強い」(同会理事)という。その中で伊勢赤十字病院は前向きだった。10年ほど前、同病院長の講演を聞いたことがある。市と協力して救急医療体制を整備し、1―3次医療の仕組みを完成させたということだった

▼その後の県立志摩病院の指定管理制度は少なからず地域住民を失望させた。「赤十字があるからいい」と語り合ったとも言うから、高度医療外の診療も増えていたのではないか

▼「地域の信頼を損なった。襟を正したい」と楠田院長。その言葉を信じたい。人気者の知事の口を極めた非難はネットなどの誹謗中傷を促し、風評被害を拡大させ、信頼回復に支障をきたす可能性なしとしない。冷静な指摘を願いたい。