<まる見えリポート>鈴鹿・小学校プール開放 安全に懸念、22校中止

【小学校の夏休みのプール開放は今年度、30校中22校が中止を決めた=鈴鹿市立神戸小学校で】

 

鈴鹿市内の市立小学校で実施される恒例の夏休み中のプール開放が、本年度は三十校中二十二校で中止される。市がプールの監視役となる保護者に安全管理対策のハードルを上げて提示したことなどがきっかけ。実施校は八校のみで、昨年より二十校減の大幅減となるが、市は「子どもたちの安全確保への保護者の意識を見直すきっかけになれば」と話す。長年続く恒例行事が過渡期を迎えている。

(蔵城洋子)

 

市によると、平成二十七年度の県内各市の夏休みプール開放は、十四市中、鈴鹿を含め四日市や亀山などの六市で実施。実施形態はさまざまで、統一はされていないという。

鈴鹿市では、市が各小学校のPTAらで組織するプール開放運営委員会に委託して毎年実施。一校あたりの委託事業費は8万5千円。開放日程は各校の同委員会に委ねられており、昨年度は二―十一日間、実施された。

全国的にプール開放に関する重大な事故が起きていることを受け、市は平成二十五年度から実施校を対象に、モニタリング調査を実施。安全管理ができているか、監視役の保護者が入水できる服装か、私語はないかなどを市職員が実地でチェックする。昨年度は十校以上で「AED(自動体外式除細動器)の場所を知らない」「スマホや私語に夢中」「監視者がスカート着用」などの問題が確認された。

これまでも水難事故防止の安全対策を呼び掛けてはいたが、各保護者に周知されていない現状を受け、担当の市文化スポーツ部は「監視にあたってもらう以上は責任を持ってもらう必要がある」と判断。本年度からは①監視者全員の水着着用②安全管理を順守徹底する誓約書の提出―を求めると通知後、全校に実施の可否を確認したところ、二十二校の保護者らが中止の判断をした。

同部スポーツ課の鈴木明副参事は「いつの間にか当たり前の年中行事の一つになり、安全対策への意識が薄れてしまったことも要因の一つ。これまで事故はたまたま起こらなかったが、このままではいざという時に子どもの安全を守れない。市の主催事業である以上、最終的な責任は市にあり、見過ごすわけにはいかない」とし、「(安全対策を)やってもらえるならば続けてほしいが、できないなら任せるわけにはいかない」と話す。

中止判断の理由は一つではないが、今年度の中止を決めたうちの一校、市立河曲小学校では、決めるに当たり、PTA執行部が保護者へアンケートを実施。約300枚配布し、五十七件の回答を得た。保護者からは「子どもたちが楽しみにしている」とプール開放を求める声もあったが、「監視は素人に負担が大きい」「利用する子どもの父兄が監視するのが当然」「注意を聞かない子どもがいる」など、否定的な意見も出された。

アンケート結果を踏まえ、PTA役員らで話し合った結果、「実施は保護者の負担が大きい」と判断。今年度の中止を決め、五月のPTA総会で同意を得た。

坂上陽一会長(51)は「実施に向けて検討を始め、資格を持つ委託業者に監視を依頼する案を考えたが、PTAの予算では無理だった」と説明。地元出身で、自身も子どもの頃は夏休みのプール開放を楽しんできただけに「子どもたちにも」との思いは強かったが、「あらためて保護者の責任の重大さを考えた時、中止の決断をせざるを得なかった」。

本年度の実施校は椿、井田川、清和、石薬師、稲生、合川、天名、鈴西の八校。市ではモニタリングを継続し、今後についてはその結果で判断していくという。