2020年3月25日(水)

▼安倍晋三首相が参院で五輪・パラリンピックの延期を示唆したことと歩調を合わせるように、鈴木英敬知事が聖火リレーの予定通りの実施に疑問符を投げた。IOC(国際オリンピック委員会)と日本政府の規定方針通りの岩盤が一気呵成に崩れゆく気配。どこへ流れつくか、予測不能に陥りつつある

▼「延期するかもしれない状況の中、機運の醸成になるのか」という知事の問題意識は当然だろう。今夏開催なら選手団を派遣しないと発表したカナダの競技チームへ、県が延期の場合の県内キャンプを求める書簡を送った方は、断腸の思いで不参加覚悟の決断をした相手にいささか間の抜けた話ではないか

▼観光・宿泊業はじめ県内経済への打撃について、知事は「リーマンショックを上回るレベル」と位置づける。全校一斉休校やイベント中止、海外渡航自粛要請など、県民生活への影響については特に例えはないようだが、県内に大規模被害をもたらした自然災害を思わせる。長期に及んだ電力供給ストップで、電気に依存する家庭ほど被害はひどかった

▼通信の切断が社会生活の隅々に甚大な被害をもたらす。ヒト・モノ・カネが物理的に入り組むグローバル社会が世界の片隅に発生したウイルスをたちまち世界の恐怖へと拡散させる。エイズ、エボラ、SARS(重症急性呼吸器症候群)など、次第に対応は困難になっているが、のど元を過ぎると教訓を生かす手段は忘れ去られてきた

▼オリ・パラ開催で、感染症対策を優先して検討したことはあるまい。その隙を新型コロナウイルスに突かれたと言えなくもない。