2017年6月15日(木)

▼上岡龍太郎がテレビで「われわれジャーナリストは」と言った時は、えっ、お笑いタレントがジャーナリストだってとおかしかったが、思えば不明の至りだった。室町時代の二条河原の落書に始まり、明治時代の川上音二郎のオッペケペー節など、庶民の芸能には反権力の素地が脈々と息づいてきた

▼上岡龍太郎が所属する漫画トリオや漫才のコロンビアトップ・ライトだけでなく、お笑いの世界では時事ネタを織り込むのはむしろ一般的。青島幸男やトップ、横山ノック、西川きよしなどは政界に進出した。そのころ、お笑いタレントが情報・報道番組の司会に起用されることが多かったのも、軽妙な辛口批評が求められたのかもしれない

▼時事ネタを得意とする「爆笑問題」が、NHKのバラエティー番組で政治家ネタを没にされたとTBSのラジオ番組で暴露したのは二年前。「政治的圧力は一切かかっていない。テレビ局側の自粛」と語り、「よくあることで、NHKに限らず、民放でも」。いまなら「そんたく」と言い変えたか

▼「爆笑問題」は選挙期間中の政治家ネタの自粛を批判したり、籾井勝人会長(当時)や高市早苗総務相にかみつくなど意気軒高のようだが、お笑いタレントの時事ネタをあまり聞かなくなった気がする。日本の報道が特定秘密保護法などで萎縮している可能性を報告書に記したデービッド・ケイ国連特別報告者が国連人権理事会で演説した

▼萎縮は知らぬが、自粛はすでにあった。圧力は効果的なところから表れる。テレビというお笑いの土壌に深く浸透している可能性は否定できない。