▼文語的表現は、時に間が抜けて聞こえる。3、40年前の古参の県議らの言葉には「ござる」が頻繁に使われ、東京からきたばかりの耳にはそうだった
▼「ゆゆしき事態だ」と言った愛知県の大村秀章知事の言葉は、しかし、古今を超える深刻さがある。身元不明の70代男性を保護しながら収容先にあぐねて深夜に管轄外の公園に遺棄したことである
▼会話はむろん筆談もできず、意思疎通ができない状態でふらふらしていたお年寄りを愛知県警津島署から託された同県海部福祉相談センターが結局、上司の指示で名古屋市の公園に置き去りにして偽名で消防へ通報。再び保護することになった警察から事情をきかれて「見失った」など、うその説明をした
▼「福祉相談センター」の名が泣く。県でも伊勢市の特別養護老人ホームで、女性介護士が84歳の女性を「徘徊するのでイライラ」すると投げつけ、骨折させたが、それと同一ではない。対処の方法が分からず、管轄外へ押しつけた格好なのだ
▼伊賀市が虐待と認定した特養に対し、県社会福祉協議会は即座に教員免許取得のための介護体験対象施設から外したが、県教委は「本年度分の単位に支障をきたす」として高校生の実習を同施設でそのまましたことに似ている。高校生は実習で何を学ぶべきかより、日程管理を優先させたのだ
▼愛知県のセンター職員は「とんでもないことをした」「上司の指示に従わなければよかった」など反省しきりという。そんなことも気づかず行動してしまったのだ。国、地方を問わず、公務員の面目躍如の気がしてくる。怖い。