大観小観 2020年1月18日(土)

▼「鉄は熱いうちに打て」は英国のことわざ。意味は二つあり、一つは、関係者の熱意があるうちに物事を運ばないと、問題にされなくなるのたとえで、もう一つは、精神が柔軟で、吸収力のある若いうちに鍛えるべきである▼英国は前者で、直訳通り「打つ」であり「鍛える」意味がないのは馬の蹄鉄を打つ鍛冶屋の仕事ぶりが由来だから(成語大辞苑)。日本に入って精神論が色濃くなったのは、日本の鍛冶屋が「刀鍛冶」をイメージし「鍛錬」につながったからという▼鉄工場の話ではなく、人間の教育について述べたものというのは外山滋比古・お茶の水女子大学名誉教授。オオカミに十歳ごろまで育てられたアヴェロンの野生児が一年の言語教育で単語一つしか覚えられず、二つ目にかかる間に死んでしまったことを例に、教えるタイミングの大切さを説く▼県教委が交通事故を起こして相手方にけがをさせたとして小、中学校の校長各一人、減給十分の一を二カ月の懲戒処分にした。一件は右折の際に対向してきたミニバイクと、もう一件は左車線から右折し、右車線の軽乗用車と衝突した。お粗末というしかないが、事故は昨年三月と四月という▼発生から十カ月後と九カ月後。定年に一、二年あり処分が間に合ったのはめでたいが、廣田恵子教育長は管理職の不祥事を陳謝し「校長会などを通じて交通ルールの順守などを呼び掛ける」。鉄ならすっかり冷え切っているのではないか▼県とともに不祥事の再発防止策を講じる県教委だがいつも後追い。教育効果を考えたことがあるか、ちょっと聞いてみたくなる。