2020年1月10日(金)

▼歩くのが健康にいいのは間違いないのだろう。奨励する健康論や専門家は世にあふれている。否定する学説などには出会ったことがない。ただ、ほかの運動と比べてどの程度の位置づけかは分からない

▼いつぞや大学教授の肩書のある人が、小幅で早足が健康には一番と書いていたのには驚いた。一日8千歩、早歩き20分が病気の発症率を10分の1にすると説く東京都健康長寿医療センター研究所の運動科学研究室長も「速く歩くには、歩幅を広げることを意識してください」。大幅か小幅か、素人は戸惑うばかりである

▼一日4千歩、うち5分の早歩きでうつ病予防が期待できる。8千歩の糖尿病、高血圧、脂質異常症予防まで、歩数と病名を対応させて、同センターは効果を説く。歩くだけで病知らずになるようで心強い。医療費に月額1万円の差が出てくるそうだ

▼「友達と会うと必ず健康の話になる」と知人らがよく言う。近くの運動公園にもウオーキングする中高年が増えた。健康ブームか健康志向か。結構なことだが、何だか追い立てられている気もしなくはない。死に方として突然死が人気というのも、長患いできない自律他律の事情と背中合わせだとすると切ない

▼少し古いが、第一生命経済研究所の調査で突然死を願う人の半数以上が「寝たきりなら生きていても仕方ないから」を理由にあげたという。元気に長生きし、最後は寝付かずコロリと死ぬピンピンコロリの言葉はよく知られ、反対語は寝たきりで長く生きるネンネンコロリという

▼相模原事件の植松聖被告を生んだ土壌に思いをはせたくなる。