2020年1月3日(金)

▼米国と旧ソ連が核戦争寸前となり世界が固唾をのんだ1962年のキューバ危機のさなか、ワシントン郊外の国際競馬レースに米ソ国際高官が臨席したそうだ。「人類が滅亡するかどうかという時代に」とソ連大使があいさつした。「競馬の話をするのは私の欣快とするところである」(松山幸雄『「勉縮」のすすめ』)

▼「競馬の記事が一面を埋めるようにしたいもの」と米国務省高官が続けた。「もっとも、そうなると私は失業してしまうが」と言って会場を笑いに包んだ。それから56年が過ぎた。昨年、ラグビーの話題が一面をにぎわした

▼スポーツが新聞の一面を飾ることは珍しくなくなった。東京オリンピック・パラリンピックの年で、今年はこれまで以上にスポーツ関連ニュースが一面に登場するに違いない。米国務省高官の願いは半世紀を経て実現した。が、もう一つの”失業“の予感は大きくはずれ、拡大しつつあるのではないか

▼「スポーツは世界と未来を変える力がある」は東京オリパラの大会ビジョン。が、その力は例えば国連の持続可能な開発目標(SDGs)とは次元を異にする気がする。とこわか国体・大会を来年に控えた県はどうか。高い理念の方針や条例が整備される一方で県教委の障害者雇用率大量水増しが発覚した

▼障がい者差別解消条例制定の半面、数々の差別の実態が当事者団体から指摘された。早期達成を目指した県教委は昨年、未達成に終わった。ある意味健全ではある。即成ではなく根本的組織変革を。コンプライアンスはじめ県の方針、条例、制度にも望むことである。