<みえの事件簿・上>名阪国道のあおり運転 「あおり」危険性認識低く

社会問題となっている危険なあおり運転による事件が今年、三重県内でも発生した。

亀山市の名阪国道で6月、あおり運転で大型トラック(13トン)を乗用車に衝突させ、男性運転手を負傷させた事件。県警高速隊は8月、自動車運転処罰法違反(危険運転致傷)と道交法違反(ひき逃げ)の疑いで、大型トラックを運転していた重田栄一容疑者(59)を逮捕した。

一方、津地検は「車を凶器とした傷害事件として立件した方がより重い罪を望める」として、重田容疑者を傷害罪などで起訴。津地裁は11月5日の判決公判で、重田被告に懲役1年8月(求刑・懲役2年)を言い渡し、重田被告は同月18日付で名古屋高裁に控訴した。

検察側の冒頭陳述などによると、重田被告は6月18日、名阪国道で大型トラックを運転中、追い越し車線を走る男性(33)の乗用車に幅寄せし、トラックの前部を乗用車の左側面に衝突させ、男性は首にけがを負ったとされる。

公判で検察側は「男性車両が車間を詰めてきたと考え、約4キロにわたって進行を妨害した」と指摘。事故直前には、運転席から手を振り、男性の追い越しを促すようなしぐさをしていたことも強調した。

重田被告は起訴内容を認めたが、被告人質問では「あおり(運転)をしているつもりはなかった。そう取られても仕方ないが、とっちめてやろうと思ったわけではない。男性がいらいらしていると思い、手を振ったのは『やめてほしい』の合図」などと述べた。

公判では法廷で衝突時のドライブレコーダーの映像が流され、大型トラックの幅寄せで男性の乗用車が中央分離帯などに衝突する様子が映し出された。濵口紗織裁判官は判決理由で「被害者が感じた恐怖は大きく、厳罰を求めるのは当然。被告人の供述からは、自身の運転の危険性についてどこまで理解しているのか不安が残る」と指摘した。

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県警はあおり運転の例として、不必要な急ブレーキ▽前方を走る自動車に異常に接近して挑発▽左側(走行車線)からの追い越しなどの6項目を掲げ、ホームページに上げている。ただ、道交法にはあおり運転の定義がないため、警察庁は同法を改正してあおり運転を定義し、違反した場合は即免許取消しなどの厳罰化で臨む方針を示している。

県警幹部は「これまでは車間距離保持義務違反などで摘発するのが一般的だった。具体的にあおり運転がどういうものか定義付けるのが今回の法改正の特徴」と指摘。「即免許取消しの厳しい処分はあおり運転の危険性を認識した措置。違反者には一度、交通社会から出て行ってもらおうということだ」と話している。