<1年を振り返って>鈴鹿・自販機設置問題 市議会や市民が不信感

平成30年度に指定管理者を外れた鈴鹿市体育協会(熊沢逸雄会長)が、市の直営施設に飲料の自動販売機を設置して収益を得ていることの是非とともに、4年間の指定管理者時代に蓄えた約3千万円に上る余剰金の使途計画が決まっていないことに、市議会や市民が不信感を募らせた。

自販機設置問題については市が方針を示したことで方向性が定まったものの、余剰金の使途については具体的な計画策定が進まず、来年まで持ち越す。

発端は5月の同協会通常総会。市体協は平成30年度に自動販売機20台を設置し246万円の収益を出した。市は今年度も21台に対し目的外使用許可を出しており、出席した委員が問題を指摘し、6月の市議会文教環境委員会で議員からも疑問の声が上がった。

議員の指摘を受け、市は全庁的な調査を実施。8月の市議会各派代表者会議で、市所有の土地建物内の自動販売機設置について、入札による設置場所の貸し付けを基本とする方針を打ち出した。

市の対応を受け、市体育協会の熊沢会長は「市の方針に従う」との考えを示している。

一件落着と思われたが、9月には市民が声を上げた。住民監査請求で同市稲生の農業髙井幸郎さんが、市に許可の取り消しや撤回、逸失利益の弁償などを末松則子市長に勧告するよう求め、市監査委員は「棄却、一部却下」の審査結果を出した。

公表書では、対象となる自動販売機を平成30年度分、31年度分に分けて審議。平成30年度分の請求に関しては「請求期間を超えている」として却下し、平成31年度分は「違法や不当な許可ではない」として棄却したものの、「市民、市議会、関係団体に対する丁寧な説明と理解を得る努力が求められる。棄却となった請求人の主張にも耳を傾けるべき点は多い」と意見を添えた。

審査結果を受け、髙井さんは「残念な結果になった。今後の対応は検討する」と話した。末松市長は「市が適正と判断されたことは妥当。今後は、8月に全庁的に共有した方針に基づき取り組む」とコメントした。

一方、余剰金問題については同市議会9月定例議会の一般質問で田中淳一議員(自民党鈴鹿市議団)が質問。石坂健文化スポーツ部長は「指定管理者の時の成果、経営努力のたまもの」とした上で「スポーツ振興に反映していただくよう協力を要請していく」との考え方を示したほか、市から市体協への補助金と委託事業費の計約3800万円については「適正である」と答弁した。

片や、市は平成25年5月の「第三回同市公の施設の指定管理者選定委員会会議」議事録の中で「同協会はNPO法人であるため利益を追求することなく、指定管理料をより効率的に公益目的に役立てることができ、同団体も指定管理を行った上で余剰金が発生した場合は市の事業を余剰金で実施する意向を示している」と説明している。

同協会は12月の理事会で、熊沢会長が余剰金を運営費、危機管理費で1千万円ずつ残し、残りの1千万円をスポーツ振興に充てる案などを出したという。新規事業は来年度同協会予算案に盛り込む。

市は今年度中に事業計画を立てるよう要請しているが、熊沢会長は「補助金をためた余剰金なら問題だが、指定管理料の中から経営努力で利益を出すことに問題は無い。いざという時の運営資金としてためてきた。一般企業と同じ」が持論。

スポーツ課の永井洋一課長は「一法人の繰越金。県が指導していない状況の中、市が強く言える状況ではないが3千万円という金額は多いと認識している」と述べ、「計画書の提出までは求めていないが、来年2月の理事会でどう利活用していくことになるか見守る」と話した。

自民党鈴鹿市議団の野間芳実市議は「元は税金。余剰金の必要性が明確でないことが問題。市ももっと強く指導するべき」と市の姿勢を疑問視し、「場合によっては来年度の補助金予算案の否決も考えられる」とハッパを掛ける。