<まる見えリポート>鈴鹿市の自販機設置問題 収益帰属先、市の管理は?

【市の運動施設に設置された自動販売機=鈴鹿市桜島町7丁目のAGF鈴鹿陸上競技場で】

鈴鹿市体育協会が市の直営施設に設置する飲料の自動販売機収益を協会のものとすることの是非が、市議会で問われたのをきっかけに、市所有の土地や建物内にある自販機設置について、市の管理のあり方が問題となっている。今後市が示す方向性により、自販機設置の収益が新たな市の財源につながる可能性もあり、全庁的な統一規定を設ける動きが進んでいる。

鈴鹿市によると、国の法改正に伴い、同市では同23年から、自販機設置場所の貸付事業が始まったという。自販機の設置については原則、財源確保のため入札で一番高い価格を付けた事業者を選定し、設置スペースを貸している。その一方で、市に明確な規定がないため状況に応じ、担当部署の判断で、自販機設置のために、公園は占有許可、施設は行政財産目的外使用許可を出し、わずかな使用料を取ることで対応してきた。

もともと市体協は市スポーツ課が事務局を担う任意団体だったが、平成19年にNPO法人として独立。独立した体協は、同22年度から指定管理者として市のスポーツ施設の管理を始めるとともに、設置許可を得て自販機設置を始めた。平成30年度からは指定管理者を外れ、施設管理は市の直営となったが、自販機設置の申請・許可(1年更新)は継続している。

問題となっているのは、市体育協会が入札をせず、30年度以降は市の直営施設となっている運動施設や公園などに自販機20台を設置し、そこから得た収益を昨年度の協会の収益として約246万円計上したこと。市議会から疑問の声が上がったのが発端になった。

市は先月26日の市議会文教環境委員会で報告し、議員からは「(市体協が)指定管理を外れたということで、自動販売機を撤去して市の利益にしてもいいのではないか」との意見が出された。市は設置の是非について具体的な回答はしなかった。

市は自販機収入についてこれまで各部署ごとに管理し、市全体の統一規定を設けていなかったことから、同委員会での指摘などを踏まえ、現状把握のため今月に入り杉野浩二副市長の指示で、全庁的な調査を実施。

その結果、7月1日現在で市の施設などに自販機は91台あり、うち入札は26台。許可は計65台で、そのうち21台の許可を市体協が得ていた。ちなみに自販機の売り上げを見込んだ入札による貸付料の最高額は、市役所本庁舎内の4台分で年間計約270万円。

他方、体協のような設置許可の場合は、固定資産税評価額や占有面積に対する固定価格で使用料を算出するため、年間数百円―1万円程度の「使用料」で済む。

自販機設置の管理を取りまとめる市管財課の宮﨑公浩課長は「全部入札にすればいいという話ではない。売り上げが少ない場所での自販機設置は入札者がいないので、許可で対応する場合も出てくる。そういう個別の判断は各部署でするしかない」と一定の理解を示すが、例えば市の努力次第で増やすことができる雑入のうち、市広報などの広告収入総額は平成30年度が約2千万円。それを踏まえると、約246万円という収益は決して少額ではない。

さらに、現在改修中で閉館するAGF鈴鹿体育館には平成29年度、計9台の自動販売機が設置されていた。来年4月に開館予定で、同数程度自販機を設置すれば100万円以上の収益が見込まれる。

市体協はこれまで、利用者サービス向上などを目的に設置許可を申請。担当部長、課長が「適当」と認め決裁し、許可してきた。

市スポーツ課の松本喜芳副参事は「スポーツ振興に役立てるための収益になるとの考えで許可した」と説明。許可となった当初の経緯については「記録もなく分からないが、市が勝手に許可を出すことはない。両者の話し合いで決まったことだと思う」とする。

市体協の熊沢逸雄会長は「市の方向性が決まれば従う」と話している。

誤解を受けない説明責任と適正な運営の透明性が求められる。