5月18日に津市内で開かれた自民党現職、吉川有美の決起大会。支援者ら約3500人(主催者発表)を前に司会を務めたのは、3年前の参院選三重選挙区(改選数1)で敗北した山本佐知子(51)だった。
演説につたなさがあった3年前とは打って変わり、安定感と力強さのある口調で大会を仕切った。「そつなくこなしていた。前向きで純粋なところを前面に出せるようになった」と、先輩県議が評価する。
神戸大を卒業後、銀行を経て都内の旅行会社に勤めていた山本。祖父は元自治相の故山本幸雄氏で、父と弟も政治家だ。前回平成28年夏の参院選では、取材に「自分もいつかはと思っていた」と語っていた。
だが、その思いはかなわなかった。当時、選挙戦では安倍晋三首相ら大物が続々と県入りし、選挙では「中立」を貫いていた鈴木英敬知事も山本支援を表明した。それにも関わらず、野党統一候補に惨敗を喫した。
それでも政治家への夢は諦めなかった。4月の県議選で桑名市・桑名郡選挙区(定数4)に立候補し、ベテランの現職らを差し置いてトップ当選を果たした。現在は晴れて県議として活動している。
参院選の敗北は、山本にとって糧となったようだ。自民党県連の幹部は「参院選に負けてからも桑名に根付いて活動し、足元を固めていた。敗北の悔しさと申し訳なさから、県議選で力を発揮した」とたたえる。
しかし、県議に就任しても参院選での悔しさは癒えない。「あれ以上ないくらいベストを尽くしていただいたのに、私の力不足で申し訳なかった」。落選が決まった日の夜が最近のようによみがえる。
今回の参院選では、大会での司会にとどまらず、企業訪問や支援者回りなど、吉川の応援に奔走する。吉川について「ずっと三重に女性の国会議員がいなかった中、保守系の先駆者になって」と願う。
政治家になったからこそ分かることも。「(県議の仕事が)想像していた以上に忙しいので国会議員はもっと忙しいと思う。子育てしながら東京と三重を行き来するのは大変なこと」と推し量る。
一度は目指した国政は断念したのだろうか。山本は取材に「県議会のステージで地域に尽くしたい」と一蹴するが、自民関係者からは「いずれ再挑戦するだろう」との見方も。山本の胸中やいかに。