<まる見えリポート>盛り上がらない知事選 注目は両候補の得票率

【候補者(左端)の演説を聞く有権者ら=伊勢市内で】

各地で激戦の様相を呈する県議選と比べ、盛り上がりが乏しいと言わざるを得ないのが知事選。「再選を目指す現職と共産推薦の新人」という構図が前回と同じだったため、関心の低さを招いているとみられる。一方、注目されるのが両候補の得票率。前回と同じ構図だからこそ、投票結果は現職の2期8年に対する評価を明確に表すことになる。現職への批判票を取り込みたい新人に対し、現職は実績や感謝を強調して積み増しを図る。いずれの陣営も「審判の日」に向けて支持拡大に懸命だ。

共産推薦の鈴木加奈子候補(79)は玉城町議を9期務めたベテランではあるものの、知名度は現職知事には及んでいないようだ。陣営は「現職を新人が追う展開」とし、選挙カーや演説で「かなこ」を連呼する。

そんな中で陣営関係者らが興味を寄せるのは、得票率。再選を目指す現職と共産推薦の新人による一騎打ちだった前回の構図は今回と重なっているため、「純粋に比較できる」という観点からだ。

前回は現職の鈴木英敬候補(44)が60万3697票を獲得し、得票率は85・7%だった。一方、共産推薦の新人候補は10万860票で得票率は14・3%で、現職の6分の1にとどまった。

鈴木加奈子候補の得票率をいかに上げるかが、陣営にとって目標の一つ。陣営関係者は「選挙はもちろん勝つことが大前提」としつつも「20%は行きたい。最低でも前回の得票率は超えたい」と話す。

陣営が狙うのは現職への批判票。街頭演説では「県政は安倍政権に追随している」と強調し、消費税率の引き上げ反対や国保料の引き下げなど、対立軸を鮮明にする。県政史上初の「女性知事誕生」も掲げる。

自公だけでなく新政みえなどの旧民進系も現職を推薦する状況での戦いは厳しいが、「現県政への批判は票に表れるはず」と共産県委員会の幹部。終盤戦は共産の市田忠義副委員長と演説で肩を並べる予定だ。

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鈴木英敬候補の陣営も得票率の行方に注目する。知事選対本部の三ツ矢憲生本部長は演説で「いかに信任いただくか、圧勝できるかが問われる」とし、得票率を「知事信任のバロメーター」と表現する。

「圧勝」のラインは、どの当たりを指すのか。候補者は数値的な目標を定めていないが、陣営内からは「90%ぐらいになれば」との声も。前回の得票率を上回れるかが一つのポイントと言えるだろう。

演説では現職としての実績や責任を強調している一方、選挙活動は現職とは思えないほど力を入れる。告示からの10日間で臨んだ演説は、公表されているだけで約90カ所。対抗馬の約1・2倍に当たる。

公務も兼ねる中でスケジュールは分刻み。29日は午前に津市郡部の7カ所で演説し、午後は県庁で退職者の辞令交付式に出席。約140人に1人ずつ辞令を手渡した後、再び活動に繰り出していった。

背景にあるのは「1人でも多くの県民に会いたい」(鈴木英敬候補)という思い。選挙カーの車内でもマイクを握り、手を振る人らに「わざわざすいません」とあいさつ。演説では一人一人と握手する。

握手には重点を置いているようで、中盤戦に張り替えた選挙ポスターも伊勢志摩サミットで来県したオバマ米大統領(当時)との握手と県民との握手を並べて掲載した。その思いが票に表れるか注目どころだ。