鈴木英敬三重県知事の2期目で特筆すべき成果と言えば、紛れもなく平成28年5月の主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)だろう。各国首脳が集うという、県にとって前代未聞の大行事だった。
県は当初、首脳会議の関係閣僚会合を誘致する考えだった。首脳会議自体の誘致に名乗りを上げたのは27年1月。他県に比べて出遅れ感があり、誘致は難しいとの見方もあったが、最終的には勝ち取った。
鈴木知事は誘致の成果について、たびたび「県民のおかげ」と話すが、鈴木知事自身の功績であることも間違いない。誘致にこぎ着けた背景には、経産省官僚時代の経験や安倍政権との〝近さ〟がある。
サミットを誘致する目的は、第一に県のアピールだったとされる。各国の報道関係者を招き、伊賀市の忍者や鳥羽市の海女を中心に発信。首脳らが乾杯した日本酒の銘柄は瞬く間に広まり、売り切れが続出した。
一方、この2日間のために費やした予算はばく大だった。施設整備費や警備費など関連予算は平成27―28年度の2カ年で約94億円。うち県の実質的な負担は約49億4千万円に上った。
財政難に直面する県は基金の取り崩しなどで負担を賄ったが、サミットの経済効果は期待通りではなかった。開催年の効果は314億6千万円。県が試算した453億1千万円には及ばなかった。
開催後には財源不足を補うため、29年度からの3年間で人件費約31億円を削減。県職員労組と県教職員組合に合意を取り付けた。サミットが決定的な要因ではないとしつつ、負担があったことは認めた。
ただ、数字では推し測れない成果もあった。参加国の中高生が国際問題を討議する「ジュニア・サミット」や首脳のパートナーをもてなす「配偶者プログラム」など関連行事で、若い世代が国際交流を経験した。
鈴木知事は各国首脳による伊勢神宮の訪問を「平和への祈りや自然との共生、日本文化の継続性を象徴する場所であると感じていただいた」と喜び、「世界平和への強力なメッセージになった」と表現した。
財政難で予算を切り詰める中で迎えた大行事。無駄な支出と必要な投資の線引きが求められる中、伊勢志摩サミットを「県政史上最大級のチャンス」と捉え、成功裏に終える手腕を発揮した。