▼県の新年度当初予算案が発表されたのを新聞で見て不意を突かれた気がしたのは、読者には何の関係もない少々マニアックな事情からだ。県庁を担当していた昔、各紙は予算案発表前に新規、目玉事業を抜こうと取材合戦した。担当を外れてからも本紙、各紙を見てしのぎを削る各紙記者を紙背に感じ楽しんだ
▼今年は見落としたか、知事査定後、いきなり予算案発表に至った思いがしたのである。目玉はいずこ、新規はどこにと「主な重点事業」を走り読みして得心した。特ダネをものにしようと意気込むほど魅力ある事業がない
▼鈴木英敬知事が柱とする「防災減災」「スポーツ」にしてもそうだ。「防災」関連の新規は「防災の日常化」推進緊急プロジェクト事業だけ。「三重とこわか国体・三重とこわか大会」関連はゼロだ。新しければいいというわけではむろんないが、地味すぎる。発想が払底してきてもいるのだろう
▼部が力を入れた要求が知事査定で知事から頭ごなしにダメ出しされる。適否はともかく、言わぬが花。職員が気力を失い、新聞が県の動きに注目しなくなる。県民が県政に感心を持たなくなるということでもあろう
▼本紙企画『検証・県予算』によると、財政課で予算カット能力を期待されて現課に異動したが案外だった。現場を知ればそうお気楽に削減はできまい。外国人実習生増で「事業が立ちゆかない」と県職業能力開発協会が訴えたが、財政課は「検定が増えれば収入も増える」。協会会長が「がくぜんとした」のは話が通じないからでもあろう
▼お粗末な理屈で泣かされる団体は多い。