<地球の片肺を守る>執務室の立ち上げ 「郷に入れば郷に従え」の精神で

【ペンキ職人に指示を出す筆者(左)】

ボンジュール! 今回は着任後、当地で真っ先に取り組んだ執務室の立ち上げについて、ご報告させていただきます。

上司である環境省次官への着任あいさつを終えた後、私は職員の一人に次官室に程近い八畳ほどの部屋に案内されました。彼いわく、私の執務室とのこと。

国際機関のデータでは、コンゴ民主共和国は一人当たりのGDPは480㌦程度(日本のGDP3800㌦の約80分の一)と世界最貧困国の一つ。聞いたところでは職員給与すら支払いが滞っているような状況とのこと。てっきり政府が所有しているものと思っていた環境省の建物も賃貸だと聞いて驚きました。よく見ると、大臣や事務次官など一部の高官を除いてほとんどの職員が相部屋で仕事をしています。

今回、私のために大きな個室を用意してくれたことは、彼らの私、そして日本政府への期待の表れであることが容易に理解できました。

次官への面会を終えた次の日から、早速、執務環境を整えるためにキンシャサの街をあちこちと走り回る日々が始まりました。執務室の薄汚れた壁をペンキで塗り直し、家具や事務機器などを搬入し、携帯電話やインターネットを契約する。支援活動のための現金などを保管する重い金庫を設置し、現地の銀行に口座を開設する。また、こうした執務室の立ち上げ作業と同時並行的に住居や自家用車などプライベートの生活基盤も整えていかなければいけません。

「一日で終わる」と豪語していたペンキ職人は初日から雨を理由に無断欠勤。そうかと思えば家具業者が搬入日を間違えてペンキを塗っている最中に家具を運び入れ。さらに携帯電話の契約では、長蛇の列の中、一日中担当をたらい回し…。

絶叫したくなるような状況の中、「郷に入れば郷に従え」の精神で平常心を保ち、次に起こるであろうことを予想し、その布石を打ちながら一歩一歩着実に物事を進めていく能力が「途上国のプロフェッショナル」たる私たち国際協力の専門家には求められます。

こうしてやっとの思いで執務室を立ち上げた後、日本の百円ショップでお土産として買ってきた日本が発明した? 優れもの文具「三色ボールペン」の束を抱えながら、コンゴ人同僚一人一人と笑顔で握手をして回りました。日本では珍しい私の苗字(ONAKA)も、「アフリカ人のような名前だな」と大好評でした(笑)

【略歴】おおなか・こうさく 昭和49年生まれ、伊勢市出身、三重高校卒。平成11年農林水産省林野庁入庁。北海道森林管理局、在ケニア大使館、マラウイ共和国環境・天然資源省、林野庁海外林業協力室などを経て、平成30年10月から森林・気候変動対策の政策アドバイザーとしてコンゴ民主共和国環境省に勤務。アフリカ勤務は3カ国8年目。