2018年11月21日(水)

▼石灯籠とバスの接触事故でバス運転手が過失運転致死罪に問われた裁判で、猶予判決を言い渡した津地裁濱口紗織裁判官の「時速10キロで周囲の構造物に接触した場合に人命にかかわる重大な事故につながることはまれ」「構造に起因していることも否めない」という猶予理由を県、県警、津地検はどう聞いたか

▼裁かれるべき当事者が法廷にすべて出てはいないということだろう。具体的当事者は誰かは、この猶予理由からでは分からない。裁判は、民事であれ刑事であれ、訴えられた被告について判断するだけで、訴外である第三者の責任に言及する場ではないからだ

▼ではなぜ、時速10キロなのに重大事故につながったか、その起因とする構造の問題がどの程度関わっていたのかを問わなくていいのか、ということは、だから、法廷で判断されることはない。裁判は事件の真相を明らかにする場では必ずしもないといわれるゆえんだ。人ひとり死んだ事故の責任の全容が、裁判で明らかになったとは言えないのである

▼県の包括外部監査人が、石灯籠の不法占拠状態の放置を指摘し、安全性への懸念を提言したのは平成25年2月。県は9基を撤去し、調査点検を継続し「通行者の安全を確保していきます」と回答したが、以後5件の接触事故が起きている。鈴木英敬知事は「車両の接触事故を想定する観点が足りなかった」と語った

▼裁判所に「起因している」とされた構造とは石灯籠そのものだけでなく、車道との適正距離も含まれる。県警や地検が原因解明のため十分に捜査を尽くしていないと言っているのである。