三重の魅力を首都圏に情報発信する「三重テラス」(東京都中央区日本橋室町)が先月末、オープンから5周年を迎えた。5年間の累計来場者数は315万6222人、売上総数は11億6188万円(いずれも今年8月末時点)。平成28年の伊勢志摩サミット、29年の菓子博など全国レベルの話題を追い風に、順調に来館者数を伸ばしてきた。ただ、東京オリンピック・パラリンピックまでの今後2年間は大型イベントはなく、「冬の時代」が到来する。そのため「何とかテラス発信で誘客したい」(県営業本部担当課)とするが、打つ手はあるのか。他力本願ではない、真の力量が試されている。
三重テラスは鈴木英敬知事の肝いりで平成25年9月28日に東京・日本橋に開店。日本の中心で三重の食や観光、伝統、文化などの魅力を発信し、「三重ファン」を拡大させ、県産品の販路拡大や県内観光の誘客を進めるのが狙いだ。
来館者数は順調に推移。県の試算で2年かかると想定していた目標数50万人を1年未満で早々クリア。さらに飛躍の契機は伊勢志摩サミット。サミット決定が発表された27年度は前年度比約10万人増の年間60万人を突破。翌サミット開催年度は年間74万人となり、この5年で最多を記録した。
サミット後の反動で急激な落ち込みも予想された29年度は、菓子博の知名度もあり目標値としていた年間60万人を達成し、高水準を維持した。
そして本年度。4月から8月の5カ月間の累計は22万8千人。毎年集客が伸びない冬枯れの年度後半を考慮すると、年間50万人割れも予想され、来館者数の落ち込みに赤信号がともる。開館以来最大の危機が訪れようとしている。
しかし、そんな心配は無用だった。県は本年度の三重テラス運営方針として、「量より質への転換」を掲げ、単純な来館者数を追うのではなく、県産品の実際の購入者数、レストラン利用者数などを「三重の魅力体験者数」として、新たな目標軸に設定した。
この方向転換に、「来年、再来年と来館者数が落ち込むのは一目瞭然。批判をかわすため『量より質』と先手を打ったのだろう」と県関係者。
現に、本年度に入り来館者数が低迷しているとの指摘には「売り上げは前年度と同水準で推移している」と県担当課。新たに設けた「魅力体験者数」では、落ち込みはないとの考えだ。
こうした県の姿勢に、前出の県関係者は「売り上げがイマイチのときは『売り上げより来館者数』で押し切っていた」と巧妙な県のすり替えを説く。
5年を経て、漫然と来館者数や売り上げのみを追求していても成長がない。ただ、「県の都合のいい目標値」になっていては本末転倒だ。都合の悪いものを覆い隠して好調ぶりをアピールしていても、すぐに地金が出るというものだ。
県では、本年度以降を「第2ステージ」と位置づけ、テラスを通じた県産品の販路拡大やネットワークの強化を図り、「質的な面においてのステップアップ」を目指すとしている。
また、東京オリンピック・パラリンピックまでの向こう2年、起爆剤となるイベントがないための対策として、「三重テラス発信」のイベントを繰り出し、来館者を常時引きつける努力もしていくという。
「冬の時代」の地道な努力が実を結べば外的要因で一喜一憂する必要はなくなる。2年後、「オリパラ効果」の際にあえて来館者数を誇る必要もなくなるだろう。