三重県鈴鹿市郡山町の鈴鹿大学で4月、国際人間科学部国際学科の髙見啓一准教授(39)が、学生が企業や行政の困りごとを解決するコンサルティング会社「鈴りん探偵舎」を設立した。ゼミ活動の一環として、実際に仕事を請け負いながら、学生たちがビジネスについて学ぶ。活動を始めて約4カ月。社長の髙見准教授は「ゼミが主体となって起業するのは全国的にも珍しい」と話す。
同大学では現在、学生が主体となって実社会で事業を展開する「つなぐプロジェクト」に取り組んでいる。起業は、同プロジェクトをきっかけに、ビジネス系科目を担当する髙見准教授が、学校の知名度向上を目的に発案した。同准教授は中小企業診断士として企業支援に関わった経験を持つ。学校の許可を得て、起業に必要な資本金100万円は自費で出資した。「学生時代にベンチャー企業をやったという実績は就職時に履歴書に書けるし、ビジネス経験は有名大の学生とも十分互角に戦える力になる」と髙見准教授。
社員として直接関わるのはゼミ生約15人。週1回のゼミ活動では時間が足りず、課外活動でもそれぞれがアイデアを出して事業に参画する。髙見准教授は学生らに、納期の大切さや相手にメリットのある提案など、実践的な助言をする。
「学生目線での課題解決」を強みに、これまでに10件程度の仕事を請け負ってきた。6月には県産茶を販売する東京都の食品卸会社からの依頼で、伊勢茶のパンフレットをベトナム語と中国語の2カ国語で翻訳し、約3万円の収入を得た。7月中旬には亀山市の企業と協働した商品開発で、伊勢鉄道をPRするキーホルダーを300個作製。現在も道の駅などで販売中で、全部売れると約10万円の収入になるという。中には無償の仕事もあるが「営業も兼ねて、次の仕事につなげるきっかけになれば」と前向きに取り組む。
現在は「テナント店の対応を知りたい」と、東海地区のショッピングセンターからの依頼で、覆面調査員として店員の対応をチェックする仕事の話も進んでいるという。
収益や見積もりなど、引き受けた仕事の詳細は学生と共有しており、収入がある程度まとまった金額になってから、学生には給与として支払われる。
今後の展望などが評価され、先月下旬には「鈴りん探偵舎」が日本商議所の平成29年度補正予算事業「小規模事業者持続化補助金」の対象の一つとして採択された。補助額は50万円。
9月には4年生の奥山夢菜さん(21)=津市幸町=が将来の社長後継者として取締役に就任する。奥山さんは愛知県のコンサルティング会社に就職が内定しており「ゼミに参加してものの見方が変わった」と話す。取締役として、将来的な会社の体制について「ゼミにこだわらず幅広い人材ネットワークを構築していきたい」と目標を掲げる。
髙見准教授は「会社が自分の手を離れるのがゴール。自主運営に任せていきたい。学生たちにはセンスがあり、『鈴りん探偵舎』が大学の顔になることを期待している」と話していた。