<まる見えリポート>三重県外で相次ぐ「松阪牛」 ふるさと納税の返礼品

【ふるさと納税を呼び掛けるチラシ=松阪市役所で】

ふるさと納税の返礼品に、他県の名産品を扱う自治体が相次いでいる。松阪牛や伊賀米といった三重県内の名産品も、県外で返礼品として扱われている状況。国は4月、返礼品を地域内で生産された物に限るよう求める通知を出したが、一部の自治体は他県の名産品を仕入れる業者が地域内にあることなどを理由に今後も取り扱う方針だ。一方、鳥羽市や志摩市は昨年、国の要請に従って真珠を返礼品から除外したが、他県では真珠の取り扱いを続けている自治体も。激化する返礼品競争を巡り、不公平感が高まっている。

ふるさと納税の返礼品を紹介するインターネットサイトで「松阪牛」と検索すると、すき焼き用やしゃぶしゃぶ用、サーロインステーキなど、さまざまなメニューが表示される。2万円の寄付でもらえる比較的安価なものもあれば、10万円以上の高額な物もある。

ただ、松阪牛を返礼品に取り扱う自治体は、松阪牛の肥育地域だけではない。インターネット上では大阪府和泉市や愛知県犬山市など、松阪牛とは関係のなさそうな自治体も見つかる。同様に、伊賀地域で生産される伊賀米を和歌山県北山村が扱っていた。

松阪市の担当者は「取り扱わないよう申し入れをすることはないが、疑問に感じている」と説明。伊賀市は本紙の取材を受けて初めて知ったようで、担当者は「伊賀地域の名産が発信される機会ではあるが、『他県の自治体がなぜ』と驚いている」

「県内の自治体に入る可能性があった寄付金が、他県の自治体に流れかねない」と危惧するのは、ふるさと納税を担当する県市町行財政課の職員。他県に申し入れなどをする予定はないが、「県内のブランドを安易に使ってもらいたくはない」と不満そうだ。

国も事態を黙認しているわけではない。総務省は4月1日付で、返礼品に関する文書を都道府県に通知。文書は返礼品について「地方団体の区域内で生産されたものや提供されるサービスとすることが適切」との認識を示した上で「良識のある対応」を求めた。

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通知を受けての対応はさまざま。大阪府和泉市は、松阪牛を扱う百貨店と連携協定を結んでいることを理由に挙げるが、通知を受けて見直す方針だ。市の担当者は「(松阪牛は)返礼品から除外することになるだろう」と明かす。

方針を変える予定はない自治体も。静岡県菊川市は市内のレストランが取り扱っていることを理由に、松阪牛のローストビーフなどを返礼品にしている。「返礼品を充実させようと事業者に協力を呼び掛けてきた立場として、取りやめるようなことはできない」

伊賀米を返礼品とする和歌山県北山村も取り扱いを続ける方針。「北山村は和歌山の飛び地で三重との縁が深い」のが理由だ。群馬県明和町は、名前が同じ縁で三重県明和町と連携協定を結んでいることなどを理由に松阪牛を扱うが、「対応は検討中」という。

一方、鳥羽市や志摩市は昨年、資産価値の高い宝飾品の自粛を求める総務省の通知を受けて真珠の取り扱いをやめたが、県外では現在も真珠を扱う自治体が複数ある。真珠のネックレスなどを扱う長崎市は「宝飾品ではなく、あくまで地場産品」と説明する。

国の通知に法的拘束力はなく、明確なルールがないのが実情だ。県市長行財政課の担当者も「ふるさと納税はそもそも、納税者が寄付という形で自治体を応援できるという制度。国や自治体、住民のそれぞれに、制度の趣旨を理解してもらいたい」と指摘する。