
【度会郡】服部吉人大紀町長と一見勝之三重県知事が地域の課題を協議する「円卓対話」が17日、同町錦の錦みなとホールであり、南海トラフ地震に備えた高台移転計画について意見を交わした。
町によると、錦地区で進む同計画では、自力避難が困難な人の住居を海抜20メートルの高台に移転する。約7千平方メートルの土地に集合住宅や集会所を造成。令和10年度までに8世帯の入居を目指す。
服部町長は、地区民64人が犠牲になった昭和19年の「昭和東南海地震」を教訓に、津波避難タワー2基を建てたと説明。発生日の「町防災の日」に毎年、避難訓練していると紹介した。
地区の65歳以上が占める高齢化率は55%とし、要支援者は「事前避難が理想」と強調。高台移転の利点ついて「平時から福祉の支援などを受けながら、安心した生活を送れる」と話した。
一見知事は「町の先進的な取り組みは、県としても参考にしたい」とする一方、移転は「命を守るには莫大(ばくだい)なお金が必要になる。現段階の8世帯だけでも5億円ほどかかるはず」と指摘した。
対象全戸の支援は「予算的に難しい」とし、国の補助制度を検討するよう提案。制度の種類を解説した上で「国に何とか出してもらえるよう、県と町で相談しながら進めていく」と明言した。
服部町長が「沿岸部の自治体の中で、一つのモデル事業にしたい」として県に協力を求め、一見知事は「防災先進地である町の事業に対し、知恵を絞って投資させていただきたい」と応じた。