町立南伊勢病院を巡る巨額の横領事件で、業務上横領の罪に問われた元職員廣出翔被告(41)の論告求刑公判が13日、三重県の津地裁(出口博章裁判官)であり、検察側は懲役8年を求刑して結審した。判決は5月8日に言い渡される。
起訴状によると、廣出被告は平成28年6月―令和4年6月、会計事務を担当していた町上下水道課と同病院で、計697回にわたって売上金などから現金計約1億6900万円を着服したとされる。
これまでの裁判で、弁護側は横領行為について認めるものの、一部の横領金額が異なるとして争っていた。
検察側は論告で「計800万円の横領について金額で争っているが、被告の弁解に根拠はなく、信用するに足りない」と主張。「被告は自らの権限を悪用して着服を繰り返し、発覚を防ぐために会計システムのデータを改ざんした」と指摘した。
その上で「被害総額は極めて多額で、返還の見込みがない。自身が応援するアイドルなどに費やす金銭欲しさに犯行を繰り返し、動機は極めて自己中心的かつ身勝手」と強調した。
弁護側は最終弁論で、一部の証言や書類に信ぴょう性が欠けるとした上で「約1153万円を弁償し、被告は預貯金のほとんどを被害弁償に充てた。懲戒免職となるなど、社会的制裁を受けている」などとして、寛大な判決を求めた。