【熊野】歌手で甲状腺がんの手術歴がある木山裕策さん(56)が1日、三重県熊野市井戸町の市文化交流センターで「ガンが教えてくれたこと」と題して講演し、約160人を前に、自分の夢との向き合い方を説いた。市と市教委による人権講演会。
大阪府出身の木山さんは大学卒業後に「自分にしかできない仕事」を求め上京。アルバイトと脚本家養成校を4年間両立させたが、27歳の結婚と長男誕生を機に、生活を変えようと広告求人会社に就職。35歳で課長に昇進し、マイホームも購入。挫折を経て「夢をあきらめて良かった」と思った1年後、甲状腺がんと診断された。
当時は4児の父となったばかり。医師から「手術したら声が出なくなるかもしれない」と告げられ、頭が真っ白になったという。闘病中に人生を振り返り、自分のやり残した最後の夢が「歌を歌うこと」と気付いた。
がんの転移はなく、手術も成功。歌手への挑戦を決意し、オーディション番組に出演した。作曲家の多胡邦夫さんの目に留まり、提供された「home」を披露。2度目の審査でデビューをつかみ取った。
挑戦を通じて「負けることも人生にいつか役立つと学んだ」と強調。参加者らに「自分の人生を選べるのは自分だけ。夢を持って人生を切り開いて」と訴えた。最後にデビュー曲「home」など全5曲を歌った。