緊急トイレを無料配布 衣料品店わたせい「災害に備え使い方覚えて」 三重

【来店客に1回分の緊急トイレを手渡すスタッフ(左の2人)=津市久居中町のわたせい久居店で】

【津】災害時の緊急トイレの使い方を覚えてもらおうと、三重県内に9店舗を展開する衣料品店「わたせい」は9日、全店舗で計5千個を無料配布した。備蓄していても使ったことがない人が大半で、災害時に役立てることができない事例が多いためで、新聞折り込みちらしと会員向けSNS(交流サイト)に引換券を添付し「必ず使って」と呼びかけた。

緊急トイレは便器に黒いビニール袋をかぶせ凝固剤で汚物を固める形式。同社はこれまで多くの緊急トイレを販売してきたが、能登半島地震の被災者の声や防災講演会で被災地のトイレ事情を知る中、緊急トイレを被災前に使ったことがなく「まっ暗な中使い方が分からなかった」「使ったが失敗し水も出ず掃除ができなかった」などの声が多くあると知り、「いざという時使ってもらえなくては意味がない」と1回分の無料配布に至った。

久居店では開店前から引換券を手にした人が次々に来店。スタッフは「しまい込まずに必ず使って」と一人一人に念押しして手渡した。大型の段ボールも全店で450枚無料配布した。

3歳と1歳の娘と来店した安楽聡美さん(32)は「広告を見て必要だと感じて来た。娘がトイレトレーニング中なので家で練習したい」、池村寿夫さん(75)は「いい試み。今まで機会がなかったので早速使う」と話した。

同店はコロナ禍で手作りマスクの型紙をちらしに掲載し無料配布しており「マスクの時も世話になったが今回もありがたい」と感謝する声が聞かれた。

曽我江里子社長(53)は「地域の人らに心の準備を高めてもらう機会になれば」と話した。