2017年12月30日(土)

▼小説家で慶應義塾大学文学部教授の荻野アンナさんが共同通信の企画でゴミ処理場などをルポした後の講演で、入場した時の鼻が曲がるような悪臭も、30分もたたぬうちに感じなくなってしまうと語っていた。自然紀行などの著書の多い開高健さんも、渓流の水に慣れた舌が感じる水道水のまずさ、薬品臭さも数日で平気になると書いていた

▼習慣にまひするのは何も五感だけではないことが最近のものづくりの現場で実感させられる。だから、と言っては言い訳じみるが、鈴木英敬知事が北京市訪問するという短いお知らせ記事を「おや、またか」と読み飛ばし、続く「自民党訪中団に同行」部分を見逃したのは、海外出張回数の多さを一度ならず取り上げた立場としては不覚だった。知事が特定政党の視察団に同行するなどは、歴代初めてではないか

▼知事としての「公務」ではなく、政治家としての「政務」なのだという。かつて政党代表や制度が変わった場合の国会議員との兼務について「同じ人が違う顔で言うのはすごい難しい」と自身の行動としては否定していたが、そう難しくもない領域に迫ってきているということか

▼昨年参院選で自民候補を応援し、サミット、リニアなど県政課題の推進のためとともに「(要請してきた方の)思いもそんたくして」と語った。日ごろ公務優先と言いながら公務の記者会見を中止し、議会から批判された

▼官公庁の仕事納め。今年は恒例の県庁の様子を伝える記事がなかった。知事の公務欠席批判回避のため、式典そのものをやめようという知恵者がいたのかもしれない。