ラグビーの国内最高峰リーグ、リーグワン1部の三重ホンダヒートが9月、2026―27シーズンをめどに、主要な活動拠点を鈴鹿市から栃木県宇都宮市に移転すると発表した。チームを運営するホンダ(本社・東京)は27年のリーグワン優勝を目標に掲げており、基盤強化のため、集客力の高い地域への移転を決めたとみられる。本田技研工業鈴鹿製作所ラグビー同好会として発足以来約60年、鈴鹿市を拠点に活動し、現在三重県内唯一のプロチームの下した県外転出の決断。県内ラグビー関係者だけでなくほかの競技団体関係者にも衝撃を与えた。
■
同チームは2000年代から国内トップリーグ参入への挑戦を本格的に始めた。22年に発足したリーグワンは2部からのスタート。今年5月まで行われた23~24年シーズンで初めて1部で戦い、12チーム中11位で回った入れ替え戦の結果、辛くも1部残留を決めた。
ホストゲームの観客動員も振るわなかった。主たるホームスタジアムのスポーツの杜鈴鹿(県営鈴鹿スポーツガーデン)は鈴鹿市郊外に位置し、公共交通機関からのアクセスも悪いため自前でシャトルバスを準備したが、シーズン中実施した7試合の平均観客数(約3千人)は1部チーム平均の約3分の1と伸び悩んだ。
「3年後日本一」に向けて継続的にチームの強化を進めていく中で、より集客が望める関東圏移転の可能性が浮上した。今年3月、ホンダの東京本社に近い秩父宮ラグビー場で行ったホストゲームで、鈴鹿の4倍以上の1万3428人を動員したことも移転の呼び水になったという。
チームでは栃木移転決定の理由について「より事業性や収益・地域社会貢献・企業PRなどが求められる時代となり、今後継続的・発展的にチームが力を発揮するため」と説明している。その一方「発祥の地」鈴鹿市をはじめ三重でも地域交流を継続していきたいとしている。
■
スタジアム問題も無視できない。三重ホンダヒートが栃木移転後、主たるスタジアムとして使用予定の「栃木県グリーンスタジアム」はサッカーのJ1基準を満たす球技専用スタジアムで1万5千人の収容が可能な上、大型オーロラビジョンが設置されている。
一方、スポーツの杜鈴鹿のメインスタジアムの収容人数は芝生席を含めて1万2千人。大型ビジョンもないため、三重ホンダヒートではホストゲーム開催のたび自前で設置し、その経費捻出も問題となっていた。
リーグワン参入を見据えて、3年前からは三重県と三重県ラグビー協会の3者でホームタウン包括連携協定を結び、地域密着に努める一方で施設改修の要望を出してきたが、チーム関係者によると「温度差があった」。県の反応の鈍さも県外転出に拍車をかけたとする声もある。
県内ではラグビー以外の競技でもトップリーグ入りを目指す動きがあるが、プロ化が進む中、参入条件は年々厳しくなっている。三重ホンダヒートの前田芳人GMは「スポーツ団体1チームだけでは戦えない。地域と一緒になってやっていかなければ戦えない時代になった」と話し、地方でトップチームを運営する難しさに理解を求めている。