【四日市】横浜市在住の切り絵作家倪瑞良(にいみずよし)さん(75)の画業50年を記念する全国巡回展「切り絵・ミュシャの世界展」が24日、三重県四日市市安島の市文化会館で始まった。西陣美術織全国巡回展実行委員会主催。入場無料。28日まで。
アール・ヌーボーを代表するチェコの画家アルフォンス・ミュシャ(1860―1939年)の優美な作風を切り絵で表現した原画や複製18点を展示。ギリシャやローマ、中国の神話などを題材に、黒く染めた和紙にオリジナルの下絵を重ね合わせ、幅1ミリに満たない曲線をナイフ1本で切り出した、繊細で気品にあふれた作品が並ぶ。
また、倪さんの原画を元に細密に織り上げた、内閣総理大臣賞を受賞した西陣美術織作品20点も同時展示している。
倪さんは神戸市出身。中国出身で仕立屋を営んでいた父の後を継ごうと服飾デザイナーを志したが、いつしか切り絵の世界にのめり込み、ミュシャの世界観に影響を受けながら独自の作風を生みだした。「切り絵のミュシャ」「切り絵の巨匠」と呼ばれて注目を集めている。
「まるで神業のような作品を、このまま埋もれさせるのは惜しい」と、西陣織国際美術館(京都市)の蔦田文男館長(78)が、気が進まない倪さんを説得して企画、全国巡回展にこぎ着けたという。「これまでの切り絵の常識を飛び越えた表現方法を、ぜひ見て感じていただきたい」と話していた。