伝統をつなぐ難しさと尊さを実感した一年だった。男子の全国高校駅伝(京都市)で34回の出場を誇る伊賀白鳳高校は4連覇が懸かる11月の三重県高校駅伝で優勝を逃し、県代表での全国大会出場を逃した。6月の県高校総体ソフトテニス男子団体では41大会連続44度の優勝を続けてきた三重高校が決勝で敗れた。その後、伊賀白鳳は東海地区代表での全国大会行きを目指して出場した東海高校駅伝で準優勝と健闘した。三重は9月に佐賀県で開催の国民スポーツ大会ソフトテニス少年男子で4位入賞した。背景には伝統校のプライドを後輩らに引き継ごうとする3年生の強い思いがあった。
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伊賀白鳳陸上競技部長距離ブロックは、県高校駅伝で平成13年以来の優勝を果たした稲生から34秒差の2位でゴールした。1区は4位通過。2位で通過した稲生に50秒差をつけられると、最後まで追いつけなかった。
最上級生の責任感は下級生チームの勢いに飲み込まれた。ハイペースなトップ争いとなった1区で、伊賀白鳳の3年生、三平弦徳主将が出遅れた。5千メートルで6月の東海高校総体を制した実力者だが、稲生の2年生エース廣瀬聡真が積極的な走りを見せたのとは対象的に、力を出し切れなかった。
レース後「(後輩のためにも)全国に行く経験は重要。東海代表を取りに行く」と誓った三平。その決意通り、2週間後の東海高校駅伝は、3年生を中心に、終盤まで首位で粘った。
最終順位は豊川(愛知)に次ぐ2位。東海地区代表としての全国大会出場も逃したが「負けは受け止めなければいけないが今のチームにとって良いレースができた」とかみしめるように話す姿が印象的だった
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三重高校男子ソフトテニス部は県総体団体決勝で近大高専に敗れた。インターハイ団体で過去6度優勝の名門だが、決勝では県総体初優勝を目指す相手の勢いに受け身になった。
3年生の若林宝来は「相手への声援がすごくてそれにのまれた」。前日個人戦を制していた3年生の盛岡昂生は「負けられないという思いが空回りした」。
主将の3年生、中山真言は「連覇を途切れさせた」現実を当初受け入れられなかった。それでも仲間の支えもあり「自分たちの代で日本一目指せる最後の機会」の国民スポーツ大会に目標を切り替えた。
東海ブロック予選を三重高校の選手で固めて勝ち抜くと、迎えた国スポでは、中山ら3年生の代になって初の全国4強入りが懸かった準々決勝・富山戦が山場となった。
シングルスで登場した2年生南龍之介が惜敗したが、3年生が軸のダブルスで2勝して競り勝った。その後、準決勝で敗れたが、中山は「(全国4強で)三重高校は弱くないというところを見せられた」と力を込める。
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男子県高校駅伝を制した稲生も伝統校の流れを汲む学校。監督の中武隼一教諭は伊賀白鳳の前身、上野工のOB。母校の恩師・故町野英二監督が掲げた「自主自立」をモットーに監督就任3年目で若いチームを23年ぶりの都大路に導いた。
三重男子ソフトテニス部2年の南は、父親が同部がインターハイ、高校選抜、国体で全国優勝した平成4年当時の主将だ。自身も新チーム主将に就任し「団体全国三冠プラス個人戦でも優勝」と、父もつないだ伝統継続に意欲を見せている。