▼ことし一年の世相を漢字ひと文字で表す「今年の漢字」は、「金」だった。平成7年に始まって30回目のうち、金は令和3年に続き5回目。初めて登場したのは6回目の平成12年で、24年、28年と続いた
▼選出回数は2回の「災」を引き離して断然トップ。間隔も短くなっていくのは、世知辛くなっていく世相を象徴している。前回の「金」は東京オリンピック・パラリンピックでの多数の金メダル獲得、大谷翔平選手の大リーグMVPや藤井聡太棋士の最年少四冠達成などの金字塔など、コロナ禍の中での明るい話題が中心だったが、今年はパリ五輪などへの話題以上に裏金問題や闇バイトによる犯罪に驚かせた
▼物価高騰も世間を不安にさせた。同じ「金」という字が取り上げられても、中身は違っているということだろう。「金」の字を和紙に大書した京都清水寺の森清範貫主は「金」への関心の高まりを認めながらも「『和』という字が書けるような社会になってほしい。社会も人も調和することが望まれているのではないか」
▼聖徳太子の十七条憲法の第一条の条文のはじめの語句「和を以て貴しとなす」を意識した言葉ではないか。争いを避けて人々が協調することは重要であるということを意味して日本の根本的精神とされるが、「今年の漢字」に「和」が取り上げられたことはない。トップ20字では昨年に続き17位に登場する
▼令和2年、3年の10位から下降気味。世界を覆う分断の嵐に日本も巻き込まれるかどうか。気がかりを乗せ今年も暮れていく。