自然と歴史の参詣道満喫 ツーデーウオーク、記者が最難関コースに挑戦 尾鷲

【木の根がはう参詣道を進む参加者ら=尾鷲市の八鬼山で】

【尾鷲】世界遺産登録20周年の熊野古道などを巡る「おわせ海・山ツーデーウオーク」(三重県尾鷲市など主催)が15―17日に開かれた。記者も最終日の八鬼山全踏破コースを歩き、自然と歴史の参詣道を満喫した。

同コースは3日間の全9コースのうち最難関ともいわれ、県内外の61人が参加。市内では前日の大雨から一転、晴天に恵まれたが、足元が悪いことは百も承知で、初踏破を前に期待と不安が入り交じっていた。

同市向井の県立熊野古道センターで受け付けを済ませると、周辺マップとともに荒縄を手渡された。参加賞ではない。靴の先端に巻く滑り止めという。出発式を終え、JR大曽根浦駅から電車で三木里駅へ向かった。

民宿や三木里ビーチを横目に、30分ほどで登山道に到着。大小の自然石が織りなす石畳は、前日の雨が残した水たまりで光っている。入口に置かれたつえを片手に、こけむした石段を一歩ずつ踏みしめて歩いた。

籠立場を過ぎ、明治道と江戸道の分岐に差しかかる。先頭集団が誤って危険な明治道を通ってしまい、職員が慌てて連れ戻す一幕も。しばらく丸太の階段を上り、ヒノキ林をすり抜けるような細道に体力が奪われた。

15郎茶屋跡のベンチで休憩していた津市の森政之さん(60)は、20年前に県職員として1丁ごとに道しるべを立てたという。しるべを指しながら「10回近く参加しているが、歩くと当時を思い出す」と懐かしんだ。

茶屋跡から約1キロの急坂が続く。上るのをためらうほどの岩場を抜けると、冷気が漂い霧がかかり、石段をはう木の根が不気味に感じた。木々の隙間から海が見えると、参加者は「もう一踏ん張り」と声を漏らした。

山頂付近の標高約640メートルにある桜の森広場では、厚い雲に覆われた九鬼の町並みや湾を見渡せた。愛知県日進市の澤田直樹さん(36)は「峠を越えた昔の人も見た景色。疲れは残るが、最高の道だった」と話した。

熊野古道センターに戻ると、完歩賞を受け取ってゴール。一息ついたのもつかの間、「来年は猪ノ鼻水平道コースやな」と市商工観光課長。全9コースの中で最長の約23キロといい、来年は体力をつけて挑みたい。