▼「校正おそるべし」は、どれだけ念入りに文章を校正しても誤植は見つかるものだという新聞業界に伝わるいましめ。論語の「後生畏るべし」をもじったシャレといわれるが、そんな軽い言葉では済まないほど痛い目にあってきた
▼戦前よく知られるのは「天皇陛下」。「陛下」を「階下」と誤り、政府および各方面から厳しい叱責を受けた。あぐねて四文字の活字を一つにまとめたり、記事を読まずに後ろから原稿の字と合わせていくなどの対策が講じられたが、神経質になるほど誤りはひょいと顔を出し、根絶はできなかった
▼三重県が議会に提出した財務報告書に金額の入力ミスによる誤表記が123カ所見つかったという。内容の誤りというより、「3533万9千円」とすべきところを「3億5343万9千円」と入力する単位違いで、ケアレスミスがとんでもない結果を招くデジタル時代ならではの恐るべき誤りといえる
▼県では昨年11月の議会提出議案でも「減額」を「追加」とするなど誤記した。財政課は「確認作業を徹底すれば防げたと思う」として「各部局に通知する」と説明した。こんなミスをどうして見逃したのかというのが新聞業界の誤植にも、議案の入力ミスにも共通する発見後の感想に違いない
▼誤植撲滅を社是としながら一向に減らない単純ミスに「腹立たしい」と責任者が内部文書で怒りをぶちまけていた。「確認作業の徹底」のお題目で防止できるかどうか。分散確認や新たな検証チーム発足など、デジタル時代に対応した方策を考えなければ、ケアレスの根絶にはなるまい。