地元商店街を舞台に新作 伊勢の小説家・秋杜フユさん

【地元商店街を舞台にした小説「ようこそ伊勢やなぎみち商店街へ」を手にする秋杜さん=伊勢市役所で】

【伊勢】三重県伊勢市在住の小説家秋杜(あきと)フユさん(39)が地元商店街を舞台にした新作「ようこそ伊勢やなぎみち商店街へ」が、集英社オレンジ文庫から17日に刊行された。秋杜さんが慣れ親しんだ商店街を舞台に、そこに住む人や訪れる人の人間模様を温かに描いた。「読者が『聖地巡礼』として伊勢の町や商店街を訪れてくれたらうれしい」と話す。

モデルになっているのは市中心部にある「高柳商店街」と「しんみち商店街」。2つの名称を合わせて「やなぎみち」とした。主人公は、東京での生活で心身を壊し、地元伊勢に戻ってきた青年。青年が商店街の駐車場の係員として働きながら、さまざまな人と関わり、優しさに触れることで心を癒やしていく。四つの短編からなる書き下ろし作品。

執筆のきっかけは、しんみち商店街沿いに実際にある駐車場。発券機や精算機はなく、係員が対応する昔ながらのスタイルに着想を得た。登場人物は伊勢弁で会話し、伊勢の行事や食べ物なども盛り込み、秋杜さんの子どものころの商店街の思い出を詰め込んだ。「伊勢が大好き。田舎の人間関係を面倒に思う人もいるけれど、地方の良さ、田舎の温かな人間関係を描きたかった」という。

秋杜さんが小説を書き始めたのは、専業主婦だった平成21年ごろ。漫画家になるのが夢だったこともあり、頭の中にあったストーリーを、家事や子育ての合間に小説にした。平成25年に集英社のノベル大賞で大賞を受賞後、小説家デビュー。現在は、3人の子育てをしながら執筆を重ねる。これまで作品は、ファンタジー小説中心だったが、今作で初めて伊勢を舞台にした。

秋杜さんは「本を読んだ人に、商店街の駐車場を利用してもらい、伊勢を巡ってもらいたい。地元の人には、商店街の思い出を懐かしんでもらえたら」と話した。

720円(税別)。全国の書店で購入できる。