▼政治家はみな重い「感染症」にかかっている。その名は「しっかり病」。しっかり取り組んでいく」など、事あるごとにこの言葉を使う。安倍元総理、菅元総理、岸田前総理も連発した。選挙戦渦中のいま、候補者の演説を聞いて、「しっかり」の数を数えてみたらどうか。その多さに驚くはずだ
▼「しっかり病」をまん延させたのは小泉元総理。小泉内閣時代の国会議事録には1年に千件ほどの例が見られるとか。この流れを引き継いだのが安倍元総理。言葉は伝染する。同じ環境にいる人間の言葉が似るのはよくあることだ
▼「しっかり」の由来は「悉皆」(しっかい)。「ことごとく」「全て」という意味で、所信表明などに使うときは「全力で」「ちゃんと」になる。しかし、全力もちゃんとも人ごとに尺度が違う。となると「しっかり」は曖昧語か
▼いまや「しっかり病」に感染していない日本人はいない。ポストシーズンを前にして大谷翔平も「しっかりと頑張っていきたい」、山本由伸も「しっかり完治している」と。子どもの頃、母親からよく「しっかりしなさい」と言われた。これをそのまま政治家に返したい。