▼「乃公出でずんば蒼生を如何せん」は中国の故事。自分が出てやらなければ、他の者には何ができるか、という自信を表す言葉とされるが、出典とされる古書には、要職につくのを拒みつづけた友人をからかった言葉の中に出てくるという
▼ともあれ、政治家がその気概を持つことは大切なことに違いない。自民党総裁選に9人が立候補したのは、そう思うと頼もしい限りで、立憲民主党代表選の4人も、しかり。兵庫県知事選はどうか
▼県議会から全会一致で不信任を突きつけられたが、失職を選択し出直し選挙に出るという。パワハラや“おねだり”を心底認めたようには見えないが、果たして乃公は出てくるのか。元尼崎市長が出馬の意向とされるが、県内の複雑な政治情勢はどうか
▼他県の知事選のことだが、公益通報制度の在り方がうやむやにならないか気にかかる。昔、JAから内部告発文書が複数届いたことがある。JAに内容の確認を求めたが、明確な答えはなく、そのうち幹部研修会で顧問弁護士が、内部告発はまず組織内の担当部門へ届けるのが手続きで、報道機関への通報は内部通報とは認められず、通報者は保護されないと講義したと聞いた
▼内部通報制度ができたばかりで、守秘義務との区分けがあいまいだった。進化したはずの公益通報制度が、兵庫県では知事や腹心、総務部門の主導で公益通報と認められず、通報者は処分された。兵庫県ばかりのことではない気がするが、知事が変わらなければ、少なくとも職員が安心できる制度になることはあるまい。