2024年9月1日(日)

▼かつて県の人事課長が言ったことがある。「自分が何かおかしな判断や指示をしたら部下の連中が黙っていませんよ」。公務員は上司の職務上の命令に従う義務があるが、内容が伴わなければ必ず問題にしてくるというのだ

▼仕事柄、そういう機会には何回か遭遇した。「こんなことをしている」などと耳打ちされたり、疑問に答えてくれる。だが、それらはおおむね個人的な関係を築いて信頼を得てからのこと、こちらがニュースソースの秘匿を厳守すると確信してからである

▼だから、兵庫県の元幹部が知事を告発する文書をマスコミに送ったことはあり得る話と思ったが、庁内の職員公益通報制度窓口にも提出したというのには驚いた。そんなことをしたらヒラメのような知事側近らにたちまち報復され将来を閉ざされてしまうからだ

▼職員公益通報制度は、公益通報者保護法に基づきより内容を充実させ、告発した職員が不利益にならないように定めているが、そんな定めは何の意味もない。告発は公益通報制度には該当しないという知事や側近の判断で、正当な手続きを踏まぬまま、内部調査に基づき「事実無根」とされて停職処分になった

▼兵庫県議会百条委員会の知事証人尋問が始まった。パワハラがあったかどうかで、知事と職員らとの主張が平行線をたどったようだが、公益通報制度を踏みにじったかどうかの審査はなかったようだ。もっともらしい制度も、上の意向に反したらひとたまりもない

▼兵庫県だけのことではない。三重県職員も肝に銘じているに違いない。