<まる見えリポート>獣害対策 アライグマ御用、民家被害も深刻 三重

【捕獲されたアライグマ=伊賀市内で】

伊賀市の家で先月末、一階の応接室にある20センチ×15センチの天井板が抜け落ちているのを住人が発見。床には天井に空いた穴から転げ落ちてきたと見られる乾燥した糞が散乱していた。

家は木造二階建てかわらぶきの日本家屋。すぐさま専門業者に調査を依頼。糞は動物のものと見られ、種などが混じっている状態から「ハクビシンかも」と言われた。天井板は屋根裏に糞尿がたまり腐ったことで落ちてきたようで、業者も「ここまでになるのは相当ひどい状態ですね」。

幸い、天井板が抜け落ちてからあまり日が経っていなかったため、糞が落ちていた以外は、居住空間への侵入被害はなかった。ただ、発見するのが遅くなり、台所や寝室などに住みつかれていたら、と考えると恐ろしい。早速駆除と屋根裏の清掃や穴埋めをお願いした。

駆除の一環として、屋根裏と侵入経路と思われる敷地内の計三カ所に捕獲用の箱わなを設置。翌朝すぐに、動物が一匹かかっているのを発見。屋根裏を荒らしていた犯人は、アライグマだった。

学習能力が高く、人の気配などを察すると簡単にわなにかからないケースも多いという。同じ伊賀市の親類の家でもわなをかけたが捕獲できなかった。すぐさま御用となったところを見ると、安心しきって出入りしていたに違いない。

屋根裏とはいえ、糞尿を放置していると衛生面にもよくない。掃除してもらったら、30キロ用の米袋が糞でいっぱいになった。

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伊賀市では、アライグマによる農作物や家屋被害の増加に対応するため、特定外来生物被害防止法に基づき、アライグマ防除実施計画を策定。平成22年3月から、狩猟免許のない一般市民でも捕獲できるようにし、捕獲用器具(箱わな)を無料で貸出し(一人一基、期間二週間)している。

北米原産のアライグマは、生態系を破壊したり、人や農林水産物に被害を及ぼす恐れのある外来種として全国的に問題となっており、17年に「特定外来生物」に指定。ペットとしての飼育や持ち運び、輸入などが禁止されている。

市によると、22年以降、寄せられた捕獲頭数は350頭前後で推移。県内で最も多いとするが、「熱心に取り組んでいる結果」(市農林振興課鳥獣対策係)という。

アライグマによる被害で多いのは、畑などの農産物を食い荒らしたり、民家の屋根裏などに侵入し、騒音を立てたり、糞尿したりするケース。屋根裏は出産場所にも適しており、営巣する場合もある。

家屋被害では、強靭な筋力と鋭い爪を持つため、「十センチほどのすき間があるとどこへでも入り込む」(同係)という。専門業者も「指三本分空いていれば侵入する」。家屋のすき間などを埋める対策は必要だが、瓦を外したり、壁に穴を空け、木板を外すのはお手のもの。「防除の有効な対策は捕獲しかない」(同係)のが現状だ。

県によると、アライグマ被害の相談件数は「年々増えている」(農林水産部獣害対策課)。特に多いのが伊賀市と津市という。

ただ、個体数の調査などは行っていない。伊賀市鳥獣対策係も「アライグマは外敵もおらず、冬にも強い。確認されて以降、ネズミ算式に増えていると見られ、すごい数がいると認識しているが、調査方法がなく実態数は分からない」という。

市も指摘するように、放っておくと個体数は増加し、被害が拡大する。また、動物は行政区域に関係なく移動する。単独市だけでなく、県を挙げてより広域的な取り組みも必要だ。