<まる見えリポート>低迷HPVワクチン接種率、「副反応」に誤解

【津市が作成したHPVワクチンの接種を呼びかけるポスター】

主にヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因で発症する子宮頸(けい)がん。国内で若い女性を中心に年間1万人以上が発症し、約3千人が亡くなっている。予防にはHPVワクチンの接種が有効で、厚生労働省は定期接種を推奨するが、令和4年度、三重県内の初回接種率は全国平均より0・4ポイント低い8・0%と低迷。接種機会を逃した世代が対象の「キャッチアップ接種」も来年3月に終了する。専門家は接種が広がらない背景に、ワクチンの「副反応」に対する誤解があると指摘する。

厚労省などによると、HPVは主に性交渉を介して感染。男女問わず8―9割の人が一生に一度は感染するとされるが、感染から子宮頸がんの発症までは数年から数十年の潜伏期間があり、ほとんどは自然に消える。

がんが進行すると子宮を摘出するなどの治療が必要となる。検診での早期発見も予防法の一つだが、根本的な治療法はなく、子宮頸部の部分切除などで流産や早産の可能性が高まることも多い。

厚労省は子宮頸がん予防のため小学6年―高校1年の女性を対象にHPVワクチンの定期接種を推奨している。昨年4月には、HPVで起きる子宮頸がんの80―90%を予防できる「9価ワクチン」の接種も始まった。

三重大病院で子宮頸がん患者の診療やHPVワクチンの副反応外来を担当している金田倫子助教も「子宮頸がんはHPVワクチンで予防することが非常に重要」とその意義を訴える。

一方で、自治体はチラシを作成するなどして接種を呼びかけているが、接種は思うように進んでいない。金田助教は接種率が低迷する原因について、ワクチンの「副反応」とされた症状が影響していると指摘する。

副反応を巡っては、HPVワクチンの定期接種が平成25年に始まった直後、接種後に慢性疲労や歩行困難などの全身症状についての報告が繰り返し報道されたため、厚労省は接種の呼びかけを控えていた。

しかし、ワクチンを接種した腕に痛みや腫れが数日続くことは多いものの、それ以外の症状で副反応の疑いがあるとして報告されたのは接種を受けた人のうち約0・09%で、そのほとんどが回復していた。

また、報告された症状はワクチンを接種していない思春期の女性にもまれに起こることがあり、名古屋市立大の鈴木貞夫教授らが実施した大規模研究「名古屋スタディ」でワクチンと因果関係がないことが報告された。

ワクチンの安全性が確認されたことで、厚労省は令和3年11月、再び接種を推奨。接種機会を逃した平成9年度―同19年度生まれの女性を対象に来年3月までHPVワクチンを無料で受けられる「キャッチアップ接種」を実施している。

金田助教は「日本を含む各国の調査で、接種後の多様な症状とワクチンに関連がないことが報告されている」と説明。「HPVワクチンは副反応の確率が低く、有効性も高いのでぜひ打ってほしい」と接種を呼びかけている。
定期接種やキャッチアップ接種ではHPVワクチンを無料で受けられる。対象は小学6年―平成9年度生まれの女性。有効性や副反応について、詳しくは厚労省のリーフレットや一般社団法人「HPVについての情報を広く発信する会」が運営する「みんパピ! みんなで知ろうHPVプロジェクト」のホームページなどで確認できる。接種の問い合わせは各市町の予防接種担当課へ。