三重県議会6月定例月会議は14日、小島智子(新政みえ、4期、桑名市・桑名郡選出)、村林聡(自民党、5期、度会郡)、藤田宜三(新政みえ、5期、鈴鹿市)、野村保夫(自民党、3期、伊勢市・鳥羽市)の4議員が一般質問した。購入した土地が被差別部落だったとして取引業者に契約解除を求めた公立学校の教員が県の「説示」を受けた問題を受け、一見勝之知事は近く、差別の解消を求める通知を全ての県職員に発出することを明らかにした。小島議員への答弁。
「説示」を受けた対応は?
小島 智子議員(新政みえ)
公立学校の教員が県から差別解消条例に基づく「説示」を受けたことへの所感や対応を尋ねた。福永和伸教育長は「痛恨の極み」と述べ、教職員向けの研修を充実させる考えを示した。
【説示】
小島議員 県から説示を受けたのは、残念ながら公立学校の教員。子どもたちに人権教育をし、差別をなくす行動者を育てる役割を担う職責の重みを感じるべき。教育長の受け止めと、今後の取り組みは。
福永教育長 痛恨の極み。県民に心配と苦痛を与え、教育への信頼を失墜させた。人権問題への認識を深める取り組みが十分でなかった。部落差別の解消に向けた動画やリーフレットを教職員に配布する。研修の内容を精査し、充実させる。
【対策】
小島議員 県も今回の説示を受けて対策を考えている。予算も確保しつつ、新たな取り組みを進めてほしい。県はどんな対応をしてきたのか。県の目指すべき姿とは。人権侵害が県庁でも無いのかを振り返るべき。
知事 非常に重く受け止めなければならない。説示をした後、総務部長名で綱紀粛正を図る意味での通知を出した。ご質問をいただき、改めて今回の重みを全職員に感じてもらうことが必要だと考える。知事名で差別解消の通知を出す。
南部地域活性化基金見直しを
村林 聡議員(自民党)
南部地域活性化基金から市町に支出する補助金が少ないことなどを問題視し、早急な見直しを求めた。県当局は「財源に限りがある」としつつ、市町の声を聞いて見直しを検討する考えを示した。
【南部基金】
村林議員 南部地域活性化基金のうち、漁業後継者育成支援事業の上限はたった300万円。複数の市町が連携しないと使えないことに加え、3年間で打ち切られる。効果的な対策ではない。直ちに見直すべき。
佐波南部地域振興局長 基金は平成24年度に創設し、1億4千万円で92の事業を進めてきた。財源が限られているため、多くの市町が連携して取り組めるようにしている。これまでも見直してきたが、今後も市町の意見を聞いて検討する。
【就労環境】
村林議員 看護職員からは「40―50代が無理をしている」「子育てや介護の隙間に当たる年代にしわ寄せがある」と聞く。看護職員の定着を図るため、休めないという根本的な問題を解決すべき。県の取り組みは。
松浦医療保健部長 女性が働きやすい医療機関を認証する制度を平成27年度から運用しているが、好事例を他の医療機関に展開できていないという課題がある。認証を受けた医療機関が事例を発表する場を設けるなどし、横展開を図る。
バレンシア州首相来県へ
藤田 宜三議員(新政みえ)
県と姉妹提携を結ぶスペイン・バレンシア州政府で面談したカルロス・マソン首相が、大阪・関西万博に合わせて来県する意向を示したと報告。県当局は受け入れの調整を進める考えを示した。
【姉妹提携】
藤田議員 新政みえの議員らがスペインを訪問し、バレンシア州のカルロス首相と面談した。大阪・関西万博に合わせた来県を求める知事の親書を読んだ首相は「その方向で進める」と語った。姉妹提携の充実を。
小見山政策企画部長 州との姉妹提携は今年で32年目。相互に訪問したり、記念イベントを開いたりしてきた。7月から県立美術館でバレンシアを含むスペイン美術を紹介する。州の意向も踏まえ、首相の受け入れに向けて調整したい。
【病害虫】
藤田議員 カシノナガキクイムシは木の中にカビを持ち込む。備長炭の原料になるウバメガシへの被害が懸念される。県の調査では、令和5年度の被害が約15ヘクタールとされるが、実態よりも少なすぎる。正確な調査を。
中野農林水産部長 被害は平成29年度をピークに減少しているが、被害を受けても枯れない場合があるため、発見が難しい。現在の調査に加え、知識や経験のある人から広く情報を集めて精度を高める。効果的な対策も検討する。
「受援」県の取り組みは
野村 保夫議員(自民党)
大規模災害時に支援を受け入れる「受援」の重要性を訴え、県の取り組みを尋ねた。県当局は能登半島地震での課題を踏まえ、県の広域受援計画を改定する方向で検討する考えを示した。
【受援】
野村議員 大規模災害時に他の自治体から円滑に応援を受けられる体制づくりが大切。県や市町の受援計画に実効性を持たせることが必要だと思う。受援計画の策定状況や、計画の実効性を高めるための取り組みは。
楠田防災対策部長 県内全ての市町が昨年度末までに受援計画を策定した。能登半島地震の被災地に派遣された県や市町の職員からは「円滑な受け入れができなかった」との報告を受けた。県の広域受援計画を検証し、必要な改定をしたい。
【観光振興】
野村議員 多くの観光事業者が令和4―5年度にかけて観光庁の事業を活用し、宿泊施設を改修して客室単価を高めてきた。この投資をしっかりと回収することが成果につながると考えるが、県の取り組みは。
生川観光部長 国の事業で客室などを改修した事業者からは「客の満足度が圧倒的に向上した」との声がある一方で「予約の日に偏りがある」との声もある。平日の宿泊を伴う旅行商品の造成や販売を促進するなどし、事業者を支援したい。