防災教育の重要性呼びかける 本紙政経懇話会で川口三重大院教授講演

【伊勢新聞社の政経懇話会で講演する川口三重大大学院教授=津市大門の市センターパレスホールで】

伊勢新聞社の政経懇話会が18日、三重県津市大門の市センターパレスホールであり、三重大大学院工学研究科の川口淳教授が「巨大地震に備える―いまやるべき事」と題して講演した。川口氏は南海トラフ巨大地震などの発生が想定される中、新しい時代の防災目標として「防災・減災文化の復興」などを挙げ、「生きる力」を育む防災教育の重要性を呼びかけた。

川口氏は災害について、社会の脆弱(ぜいじゃく)性によっても引き起こされると強調した。阪神淡路大震災や東日本大震災などを経て災害対策基本法などが改正され、国土強靱化(きょうじんか)や耐震化の促進などハード、ソフト両面から各種対策が強化されてきた一方、住民の自助・共助の意識を徹底することも重要だと指摘。

「日本は古来から災害は多かったが、自助・共助が根付いていた。自分や家族、周囲の命を自分たちで守るという当たり前のことができる文化を復興させ、社会の脆弱性を低くすることが大切だ」と説いた。

「生きる力」を育む防災教育の重要性も強調。災害が起こった際に取るべき行動の「答え」だけを知る教育・対策ではなく、「答え」に至る行動原理やプロセスを理解し、防災や減災につなげていくことが必要だとした。

1月1日に発生した能登半島地震についても言及した。実際に現地を視察して、液状化など地盤の破壊や都市部での大規模火災が被害の特徴だったと強調。「液状化は地盤が問題であるため、耐震化対策を取っていた建物でも倒壊する恐れがある」と指摘した。

また、輪島市では三重県の支援に感謝されたとし、「現場を見て、経験した人たちは南海トラフ地震などでも必ず役に立つだろう」との見方を示した。

川口氏は名古屋市生まれ。三重大工学部建築学科助手、同大大学院工学研究科准教授などを経て令和5年に同教授に就任。同大地域圏防災・減災研究センター副センター長、県・同大防災・減災センター地域・企業支援みえグループ長など併任。