▼津市で昨年発生した4歳女児暴行死事件は、母親を懲役6年にした津地裁の判決で刑事上の一応の区切りはついた。県の第三者委員会の報告がまだでない中でいささかもやもや感もあるが、求刑8年を2年減刑した。母親の事情も考慮したということだろう
▼ネグレクト(育児放棄)で我が子を死にいたらしめる母親が「身勝手かつ短絡的」と断罪されることに異議はないが、母親だけが悪いのかというと疑問を感じる。日本は育児で問題があると、シングルマザーの場合、父親の責任はほとんど問われない。しかし、日本の社会システムは、父親が家族の大黒柱で、父親が生活費を稼ぎ、母親が家庭を切り盛りするという前提になっている
▼賃金に男女差があるのも、女性に非正規労働者が多いのも、基本的にはこの考え方が根本にあり、多くの国民があまり不思議とは思わない。家族の最高責任者を男性と見立て、男性に家族の生活保障を“委託”し、それに基づいて生活保障の制度が構築されている
▼男性の給与さえ手厚くしていれば、大抵の家族の課題は家族の中でどうにかやりくりしていく。男性という生活の責任者がいなくなったらどうなるか。その転換ができていないことが、さまざまな男女差になって現れている
▼母親は3児のシングルマザーで工員だった。父親の関わり方は事件発生から不明だが、生後すぐ赤ちゃんポストに預けたことは、その段階で現実を認識していたのではないか。頑張る気力と不安が交互に繰り返されていたとも思える
▼少子化対策の影である。