▼エドワード・ギボンの『ローマ帝国衰亡史』は、なぜ興隆を誇ったローマが衰退したのかが描かれている。ローマの繁栄は新市民となった移民が支えたが、ゲルマン民族などが帝国内部に深く入り込むと、分断と対立が激化してパクス・ローマーナは崩壊した。ローマを米国に置き換えれば、これは現代の物語だ
▼メキシコ国境から国内に入り込んだ不法移民は、NYなどの聖域都市に送られ、そこではスーパーなどでの万引が横行し、治安は悪化の一途。不法移民に寛容なバイデンをトランプは激しく非難している
▼国内の分断・対立は、米国の世界覇権の後退を招く。米国という警察官なき世界では、ウクライナ戦争もイスラエル・ハマス戦争も終わらない。ローマが帝国の周囲で統治能力を失ったのと同じだ
▼ハンナ・アーレントは『革命について』で、米国はローマの継承国家としている。米上院はローマの元老院、議事堂はローマ様式の新古典様式建築、国章はローマと同じ鷲だ。バイデンの寛容なリベラルも、トランプの利益追求のみの米国第一主義も、国内問題を解決できなければ、パクス・アメリカーナを崩壊させる。