▼鈴鹿市の住宅街のアパートで絞殺体として発見された77歳のアルバイト男性を殺害した疑いで、27歳の住所不定、無職男性が逮捕された。「捜査に支障がある」として県警は本人の諾否を明らかにしていない
▼殺害を認めていないのか、というのがこうした場合の一般的な理解になるのだろうが、そうとばかり思い切れない切なさが、この事件にはある。77歳の初老のアルバイト男性を、青年は金銭目的だけで襲ったのだろうか
▼隣近所、言葉を交わさないことも少なくなく、アルバイト男性もそうであったようだが、同じアパートに住み、面識もあったという相手を、2万~3万円奪うのだけが目的で殺人まで犯したのだろうか
▼鈴鹿市と言えば、かつて市の福祉資金支援のたらい回しで、市内での就職に失敗して東京へ戻るまで、野宿同然だったと報じられた。今度の加害青年はアパートを出て以降、空き家で暮らしていたという。コンビニでタバコなどを盗んだとして先月30日、鈴鹿署に逮捕されている。福祉の衰えに変わりはないか
▼「最近の若いのはおっかないなあ」と、同年配の友人らが言っていた。少年犯罪の厳罰化や低年齢化は近年の流れだろうが、理解不能な暴力沙汰が起きると社会の不安は増す。過剰防衛も引き寄せることになるのではないか
▼逮捕から起訴はもちろん、裁判になっても犯行の詳細が分からぬ事は多いが、取り調べ当局は人々の気持ちをお落ち着かせるためにも、事件の構図は一日も早く明らかにして人心の安定に努めてもらいたい。