【伊勢】能楽の文化と伝統的なものづくりを考える「飛天双〇能(ひてんふたわのう)シンポジウム」(伊勢新聞社など後援)が7日、三重県伊勢市宇治中之切町の神宮会館で開かれた。能に関わる伝統工芸の職人や有識者らが登壇し、伝統技術や文化の継承について意見を交わした。
重要無形文化財総合指定保持者で能楽師の大倉正之助さん(68)らが伊勢神宮内宮へ奉納する能公演「飛天双〇能」を前に、一般財団法人「令和文化蔵」(京都市)が主催した。
シンポジウム第1部では、能で使う楽器や装束づくりに携わる職人らが登壇。「伝統ものづくりの現場」と題し、かつての国産、天然素材に代わり、輸入素材や科学染料が使用される現状と、技術や素材の保存継承に向けた取り組みについて話し合った。
続く第2部は、大倉さんを進行役に有識者や神宮関係者らが、日本文化や伝統の継承について意見を交わした。
神宮司庁広報室次長の音羽悟神宮参事は、20年に一度の神宮式年遷宮の継承について、「神宝を調進する際、伝統文化の継承と古代技術の復元、地球環境への配慮をテーマに掲げた。化学染料は便利だが、古代技術復元のため、化学染料から脱却し植物染料の復興を目指した。そのようなチャレンジが伝統文化の継承につながっていく」と述べた。
作家の竹田恒泰さんは、伊勢神宮の歴史や文化に触れながら、「ただ同じことをしているだけでは、伝統は継承されない。大きな危機を乗り越えて今がある。伝統の維持は、工夫やクリエイティブを重ねてはじめて保たれる」と語った。
シンポジウムの合間には、能楽師の紹介や能のお囃子演奏の披露もあった。
「飛天双〇能」は、年に一度、12年かけて全国の神社仏閣に能を奉納する計画。第2回目となる内宮への奉納は、8日午前10時―午後3時に参集殿能舞台で行われ、一般公開される。