2024年2月5日(月)

▼今年の椿大神社の節分祭には先月31日に大関昇進を決めたばかりの大相撲、琴ノ若が特別追儺役として参加し、「福は内、鬼は外」と豆をまいて、一段と盛り上がったようだ

▼何しろ、モンゴル出身の霧島、豊昇龍が昨年、立て続けに大関に昇進して、日本出身力士は御嶽海、正代と陥落して影が薄い。琴ノ若は久々に現れた大器だが、甘いマスクとやさしい取り口で、やはり大器とされながら関脇どまりだった父親の先代琴ノ若(佐渡ケ嶽親方)を連想させたが、この二場所は見違えるような厳しい相撲が目立ち、大関はもちろん、横綱への期待も膨らんだ

▼神事の後に会見し、佐渡ケ嶽親方は「昨年は小結、ことしは大関、来年の椿大神社節分祭には横綱として参加して、先代(元横綱・琴櫻)との約束を果たしてほしい」。勝負の世界にともに生きる父親としては現役時代のイメージの甘さが気になるが、琴ノ若自身は「できることを最大限にやって来場所に臨みたい」。このところ、その言葉を裏切らず、めきめき力を付けているのが頼もしい

▼追儺の儀は、疫病や災害に悩まされた平安時代、悪霊退散の願いを込めて始まったとされる。災害に苦しめられるのは現代も平安時代に劣らない。横綱の土俵入りは、地の神を鎮める目的で始まったとされる

▼訪れた約4千人は「おめでとう」「大関!」の声をかけて、競って福豆、福扇、福銭、紅白餅などを得ようと手を伸ばした。節気の間、すなわち節分に入りやすいという魔を払って、横綱の誕生を願う庶民の願いがこもる。