三重県包括外部監査人の神谷研税理士は1日、令和5年度の監査報告書を一見勝之知事に提出した。県企業庁発注工事の入札で、くじによる落札者決定や「一者入札」が多いことを問題視。最低制限価格を「変動型」にするなどの対策を提案した。
神谷監査人によると、5年度の監査対象には、企業庁の水道用水供給事業と工業用水道事業を選んだ。企業庁を監査するのは、施設の管理などを対象とした平成28年度以来となる。
監査結果によると、8件の事務について、法令や条例、規則などに反している「指摘」と判断。法令などには反していないが、正確性や有効性などに課題がある「意見」は15件だった。
「意見」では、4年度に価格競争方式の一般競争入札で実施した1千万円以上の工事76件のうち、62%に当たる47件について、複数の業者が同額で入札。くじで落札者が決まった。
さらに、18件の入札については、参加が1者だけだった。総合評価方式で実施した一般競争入札でも、34件のうち約7割に当たる24件が複数者による同額での入札だったという。
監査結果は、くじによる落札者決定で「実質的には入札の意義が失われている」と指摘。一者入札の多発には「透明性や競争性を確保できる参加資格になっているかの検証が望まれる」とした。
「指摘」では、浄水場に保管した資材と帳簿に記載した数量が一致していなかった。劇物のカセイソーダを仮置きしていた場所に、関連法で義務付けられた表示がないケースもあった。
神谷監査人は1日の記者会見で「くじによる落札者決定や一者入札が多い。自由競争がなされているのか」と指摘。「県には検証や対策の検討を進めてもらいたい」と述べた。
また、監査が進んでいた昨年11月には、企業庁発注工事の入札を巡る贈収賄事件で、県職員らが逮捕された。神谷監査人は事件について「ニュースを見て寝耳に水だった」と語った。
報告書を受け取った一見知事は「報告書をよく見て、適切にやっていきたい」と説明。服部浩副知事は「一者入札は少し問題。本来の姿に近づける方法を考えたい」と語った。